ホーム エッジ コンピューティング センサーの高度化と多様化―センシングの進化が生み出すもの

センシングという言葉はセンサーによってデータを取得すること、と多くの方が理解しているでしょう。実際にセンシングによりどのようなことが可能になるのでしょうか。センシングの具体的な意味や種類、センシングが持つ可能性についてご紹介します。

産業を進化・深化させるセンシング技術

センシングは何をする技術?

センサーによりさまざまな情報を計測することをセンシングと言います。こうしてセンシングにより得た情報を数値化し活用する技術の総称が、センシング技術です。センシングは計測のみを表し、センシング技術は計測・数値化・伝達までを含めます。
センシング技術では、センサーによって得られた定量的なデータを応用することでさまざまな可能性が生まれます。その可能性と重要性を一層高めたのが、IoTの普及です。モノとインターネットが接続されるIoTにおいて、実際に取り扱われているのはモノの状態を表す情報です。この情報を取得する役割を担っているのがセンシング技術であり、IoTには不可欠な技術としてあらゆる産業への応用が期待されています。

センシングによって何が生まれる?

では、センシング技術が応用されることで何が変わっていくのでしょうか。
センシング技術のない時代には、人の目や耳や鼻、感触など人間を通してしか情報を得ることはできませんでした。しかし、センサーの登場と進化、センシング技術の発展により、人間の感覚だけでは得ることのできないさまざまな情報を得ることができるようになりました。さらに、大量の数値化された情報を同時に複数の場所から一瞬で届けることができるのです。
また、以前は計測できる対象も限られていましたが、現在ではセンサーの開発が進み、多種多様なものを計測することが可能になっています。
これらの膨大なデータはIoTやAIを通して、大きな価値を生み出す多くの可能性を秘めています。センシング技術とIoT、そしてAIが結びつくことにより、人々の生活を新しいものへと変える可能性すら持っていると言えます。

センシングの種類

IoTの加速度的な普及により、以前にも増して多種多様で精度の高い情報が求められるようになりました。これに伴い、センシング技術もさらなる進化が求められ、センサーも多様化・高度化しています。

また、センシング技術そのものも応用の方向性として大きく2つに分けて考えられるようになりました。これについては後ほど説明します。

センサーは多様化している

センシング技術の進化にはセンサーの進化が不可欠であり、あらゆる対象をセンシングするため、センサーは多様化・高度化してきました。次のようなセンサーの活躍と、それによって得られる情報の応用が期待されています。

  • 電流センサー・電圧センサー・電力センサー

電気・電子機器の各部の状況を計測して制御するために、これらのセンサーは不可欠です。また、発電・送電・配電といった電力に関する分野、ロボットや宇宙開発、医療など、あらゆる分野に関係するセンサーです。

  • 圧力センサー・感圧センサー

油圧や水圧、空圧によって作動する機器に使われています。このほか、人の感触から得られる情報をセンサーによって計測するために、感圧センサーが応用されています。

  • 温度センサー・湿度センサー・風速センサー・気圧センサー

気象予報はセンシング技術と深い関わりがあります。多くの地点から綿密な気象情報をセンシングし、それを分析することで予報が作られます。また、スマート農業においてもこれらのセンサーが活躍しています。

  • 超音波センサー・電波センサー・赤外線センサー

人間の目では見ることのできないものを計測するのがこれらのセンサーです。超音波や電波によって物体までの距離やものの動きを計測できます。

  • 画像センサー・赤外線カメラ

ものの形状や色、動きを解析できるカメラは、画像についての情報を計測する画像センサーのひとつと言うことができます。このように人の目の代わりとなって画像から情報を得るものだけでなく、赤外線を用いることで人の目では見ることのできない暗所での撮影も可能です。

  • 化学センサー・ガスセンサー

気体状の物質を検出するために活躍しています。特に人体に影響があるガスや可燃性のガス、オゾン層破壊の可能性があるフロン、温暖化係数の高い温室効果ガスなどの検出・計測に応用されています。

  • 味覚センサー・嗅覚センサー・アルコールチェッカー

人間の五感で得ていた情報をセンサーによって計測するというのは、センシング技術が目指すもののひとつです。そのなかでも計測・数値化が難しいとされていた味覚や嗅覚といった感覚的なものも、現代ではセンサーによって数値化できるようになっています。

  • 血糖センサー・脈拍センサー・皮膚水分センサー

これからの医療はセンシング技術によって支えられていくかもしれません。センサーによってリアルタイムに状態が計測されることにより、医療の高度化と医療従事者不足の解消につながります。これまで生活が制限されていた人でも安心して暮らせる社会に近づけるため、医療に応用できるセンサーの開発は期待度の高い分野です。

  • 加速度センサー・ジャイロセンサー・GPS/GNSS

スマートフォンに応用されていることで知られるこれらのセンサーは、日常生活に溶け込んでいるセンサー類と言えるかもしれません。また、ロボット開発には不可欠のセンサーとして応用の可能性も大きいと言えます。

センシング技術は大きく2つに分けられる

近年のセンシング技術は「スマートセンシング」「リモートセンシング」の2つに大別されます。
スマートセンシングは、当初から発展してきたセンシング技術が進化していく延長線上にあるものと言えます。ものや環境のさまざまな状況を計測して数値化し、人に伝えたりものを制御したりするために使われるセンシング技術です。建設業界・物流業界・製造業を中心に発展し続けていますが、医療や農業の分野でも応用が期待されています。
もう一方のリモートセンシングは、離れた場所にあるものの情報を取得し遠隔操作することを目的としたセンシング技術です。宇宙開発や航空分野で研究が続いています。
実際にこの2つには明確に境界線が引かれているわけではなく、重なっている部分もあります。また、リモートセンシングはスマートセンシングの土台の上にある技術という考え方もあります。
働き方改革によるワーク・ライフ・バランスを考慮した新たな働き方や、新型ウイルスに関連して必要となる新たな生活様式によって、リモートが注目されています。こういった情勢下で、リモートセンシングの新たな用途が検討され、活用の幅も期待されています。

これからセンシングはどこに向かうのか

人間とセンシングの関わりには、いつ始まったとは言えないほど長い歴史があります。例えば、旗のはためき方によって風の強さを測っていたのも、原始的なセンシングと言えるでしょう。また、センサーによって感知した情報を入力することで次の動作につなげる制御装置は、製造業の大きな変革とFAの歴史とともに歩んできました。
しかし、センシング技術に大きな変化を起こし、大きく注目されるようになったのはIoTの普及がきっかけです。「モノのインターネット」によって情報の運ばれ方・使われ方の幅が広がると同時に、情報を取得する方法と取得できる情報の種類にも注目が集まり、センシング技術の需要が爆発的に高まりました。
こうして得た大量のデータを解析する方法にも大きな変化がありました。センシング技術によって取得したあらゆるデータを蓄積しビッグデータとして扱い、AIと組み合わせることによってさらに応用の幅は広がります。また、エッジコンピューティングにより情報処理のリアルタイム性が加えられます。こうして、情報の量や方向性に時間軸の要素も加えられることで、応用の可能性は無限に大きくなります。
センシング技術・IoT・ビッグデータ・AI・エッジコンピューティングが複合的に活用されることで、情報はただの数値にとどまらず、新しい価値を生み出していくと考えられます。

センシングの進化により情報活用の幅は無限に広がる

センシングによって得られる情報の種類や量、正確性が増すことにより、それを応用した技術はさらに大きな可能性を持つことになります。センシングとIoT、ビッグデータ、AI、 エッジ コンピューティング、これらの組み合わせはさまざまな産業だけでなく、医療や宇宙開発においても新たな可能性を持つとして、大きな期待が寄せられています。

⇒詳しくは
センシングとIoTの進化がもたらす産業の変化―AI・エッジと共に次の段階へ | Stratus Blog

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