ホーム エッジ コンピューティング 設備稼働率 ~ 総合設備効率と7大設備ロス

生産現場ではよく「設備稼働率を上げろ」と言われます。よく使われる言葉ですが、実はその意味は意外と奥深いものがあります。ここでは、設備稼働率の定義と、良品率、7大設備ロス、そして設備総合効率との関係を説明します。

設備稼働率とは?

設備稼働率とは「稼働可能な状態の生産設備が、どれくらい実際の生産に使われたか」を示す指標のことです。

設備稼働率には、時間稼働率と性能稼働率の2種類があります。

時間稼働率

時間稼働率とは、生産設備に電源が入っている時間を稼働可能な状態と定義し、そのうち実際に生産が行われている時間の割合のことです。具体的には、負荷時間(電源が入っている時間)から停止時間(生産設備が止まっている時間)を引いた値を、負荷時間で割って算出します。

この時間稼働率を低下させる原因としては「故障」、「段取り・調整」、「工具交換」、「立ち上がり」があります。近年のエッジ コンピューティング プラットフォームを用いた人工知能による予知保全は、この「故障」の予測を行うことで保全計画をできるだけ早く立て、復旧までの時間を短縮するために行われる場合が多いです。

性能稼働率

性能稼働率とは、設備が動いた時間のうち、性能どおりに稼働していた割合のことです。この「性能どおり」というのが大切で、生産設備に不具合が発生するとこの性能稼働率が低下してしまいます。具体的には、基準サイクルタイム(基準となっている生産の単位時間)と加工数量を掛けた値を稼働時間で割って算出します。または、正味稼働時間を稼働時間で割ることでも算出できます。

この性能稼働率を低下させる原因としては「空運転」「チョコ停」があります。近年のエッジコンピューティングを用いた人工知能による予知保全は、「チョコ停」の監視にも効果があるとされています。

良品率とは?

良品率とは生産数量のうち、どれくらいの良品があるかを示す指標です。具体的には、加工数量から不良数量を引き、その値を加工数量で割って算出します。

良品率を低下させる原因としては「不良・手直し」があります。こうした良品率は製品の最終検査を厳格に行えば上がると考えがちですが、良品率は検査工程以外の生産設備の最終的な結果なので、加工数量が変わらなければ良品率が下がる場合もあり得ます。このような場合、生産工程のどこかにトラブルや不具合が潜んでいる場合が多いです。 エッジ コンピューティングによる生産設備の監視は、この「不良・手直し」の低減にも効果があります。

なお、混同されがちな言葉として「歩留まり・収率」があります。「歩留まり・収率」は投入された材料と、その投入された材料から生産された製品の比率のこと。「良品率」は、加工した製品にどれくらい良品が含まれているかを示す指標であるところが異なっています。「材料対製品」と「製品対製品」の違いと言えます。

設備総合効率とは?

設備総合効率とは、生産ラインや生産設備の最終的な総合評価と言える指標です。価値稼働時間を負荷時間で割ったものとも言えます。具体的には、時間稼働率と性能稼働率と良品率をすべて掛け合わせたものとして計算されます。

最終的にこの設備総合効率をどれだけ向上させられたかが、設備の管理レベルを評価する指標であると言えるでしょう。つまり、実際の設備総合効率は、想定した設備総合効率に満たない場合がほとんどであり、生産ラインの設計時に想定した設備総合効率に、実際の設備総合効率をできるだけ近づけるのが生産技術部門の腕の見せどころとなるのです。

そのために、次に述べる7大設備ロスをできるだけ低減することが重要となります。

ちなみに、実際の設備総合効率や歩留まり・収率がどれくらいなのかは、各工場のトップ・シークレットに該当する場合が多く、詳しくは分かりません。また、作っているものや季節、作業員などによっても変化するため、決定的な数値を出すことも難しいです。ただし、工場の生産ラインが立ち上がり間もない状態のとき、実際の設備総合効率は低く、安定稼働に入ると実際の設備総合効率は高い値に維持されます。そして、生産ラインの寿命が近づくと、また実際の設備総合効率は低くなる傾向があることを押さえておくとよいでしょう。

7大設備ロスとは?

生産設備の総合効率を低下させる7つのロスのことです。上記で述べた、「故障」、「段取り・調整」、「工具交換」、「立ち上がり」、「空運転」、「チョコ停」、「不良・手直し」があります。

故障

いわゆる、設備の故障です。故障から回復するまでの時間は生産ができないので時間稼働率が低下します。そこで、エッジコンピューティングを活用した予知保全を行い、故障の予測から回復までの時間をできるだけ短くすることが望まれます。予知保全を行うと、モニタリングしているデータに小さな異常があった段階で故障の予測を行い、警報を発することができます。そして、この予測の段階で保全計画を立てることができるので、予知保全を行わない場合に比べて、回復までの時間を短縮することができるのです。

⇒予知保全についてはこちらの記事もご参照ください。
予防保全・予知保全とエッジ コンピューティング |Stratus Blog

段取り・調整

装置に加工物をセットする時間や、加工時の寸法出しなどの作業のことです。短縮するためのアプローチとしては、ロボットによる段取り替えといったことが考えられます。例えば、加工物が重い場合や、加工物が非常に大きかったり、逆に非常に小さかったりするような、人間によるハンドリングが難しいケースです。一方、ラインに流す量や、加工の複雑さなどの点を考慮して、自動化をあえて避ける場合もあります。加工精度が求められるような場合には段取りにも精度が要求されるので、人のハンドリングの方が向いていると言えるでしょう。

工具交換

切削工具やドリルなどの工具の交換作業のことです。最近の設備、特に工作機械ではマシニングセンタ(MC)のように、自動的に工具の交換を行う機能が付いたものがあります。この自動工具交換機能は、工具の損耗や破損などを検知すると自動的に工具を交換するように構成されています。そして、工具の損耗検知といったことにもエッジコンピューティングを使ったエッジAIが有効な場合があります。

立ち上がり

設備の電源が入ってから想定した速度で稼働するまでの時間のことです。近年の設備では、立ち上がりの速度が昔に比べて速くなっているものが多いです。

空運転

いわゆる「加工を行っていないが設備が動いている」状態のことです。これも、近年の設備ではかなり少なくなっています。

チョコ停

設備が短時間、何度も止まってしまうことです。特に停止原因の不明な場合を言うことが多いです。生産設備メーカーでは、このチョコ停をできるだけ少なくするように可能な限り信頼性を高めた設計・製造を行いますが、原因が不明で突然発生することが多いので、対応に苦慮する場合もあります。発生する条件には何らかの傾向がある場合が多いので、エッジコンピューティングによる遠隔監視を常時行い、傾向をつかむことも必要な場合があります。

不良・手直し

いわゆる製品の不良や、不良品の手直しの作業のことです。不良品の手直しは人手がかかることが多く、製品単価がもともと高額の場合を除いて、コストを押し上げる原因になる場合が多いです。製品の設計段階での不具合もありますが、生産設備の何らかの不具合の結果、不良が発生していることが多いので、エッジコンピューティングによる設備監視や部品の検査を各工程で行い、原因を突き止めることが必要になります。

設備総合効率を上げるために

設備稼働率と関連する言葉について解説しました。設備総合効率を上げるために生産工程の各段階で、設備管理を強化することが重要です。その設備管理を可能な限り効率よく行うために、エッジコンピューティングの導入は有効な手段のひとつとなります。

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