ホーム リーダーシップ 人工知能 ~日本ストラタステクノロジー 社長ブログvol.6

人工知能 ~日本ストラタステクノロジー 社長ブログvol.6

朝起きると、我が家にはGoogle Homeがあるので、“今日の天気は?”などと気楽に聞きます。しかし、少し難しいことを聞くと“お役にたてません”と返事するので、ついつい“バカ!”というと、その後に面倒くさいことになることがあります。出社して会社のメールシステムを開けると、迷惑メールと考えられるものを除外してくれています。少し厳しめのルールで除外しているようなので、読んで良いものと考えられるものは受信許可をします。インターネット上で何かを検索すると結果が記憶されていて、別なサイトに行っても関連した広告が追っかけてきます。もうわかったから追っかけるのはこれぐらいにしてくれとつぶやきたくなります。客先に行った際に、玄関にロボットが置いてあって、こちらを見て、意味ありげな動きをします。但し、声をかけてもほとんど役に立たないようです。何でこんなものを置くのだろうといぶかってしまいます。

どうも好むと好まざるにかかわらず、我々の生活には、既に多くの人工知能技術を応用したものが入り込んでいます。現在の完成度はどうかと思うことが多いので、上記のような少し意地悪な評価になりますが、きっと将来は急速に改善されると期待しています。現時点でも、狭い領域に仕事をしぼりこんだ場合、たとえばチェス・将棋・囲碁などでは、トッププロと互角以上の対戦成績を残しているのですから。

自分の知識をすこしリフレッシュしようと思って、人工知能関連の本を数冊読んでみました。実は、人工知能の本を読むのは、第2次ブームが収束してからは初めてなので、30年近く間隔が空いているかもしれません。最近はストラタスもIoT/エッジコンピューティングが重点領域になっているので、人工知能技術というのは隣接した技術になっています。当社の機器上で稼働する分析系のソフトウェアソリューションには、マシンラーニングの技術が応用されていますケースが見うけられます。先日もIoTに関するソリューションセミナーを八重洲で実施しました。

製造業における動向、ソリューション、そして事例などを日立システムズ様、FogHorn Systems様、そしてシーメンス様に講演頂きました。日米欧のリーダーや先端ベンチャーを招くことができまして、参加者にも大変満足いただきました。その講演でも、米国のFogHorn Systems様のプレゼンテーションではCEP(Complex Event Processing:複合イベント処理)分析を紹介しつつ、マシンラーニングとの連携を説明されていました。

今回の人工知能ブームは第3次と言えるものですが、複数の著者が人工知能技術の現在の能力や将来の発展に、抑制的な態度をとっているのが印象的でした。たとえば、人工知能は出来ているのかという根本的な問いには、本当に意味での“人間のように考えるコンピュータ”はまだ出来ていないということが共通理解になっています。人間の知的な活動の原理を解きほぐし、工学的に実現するという意味での、本当の人工知能は出来ていないということです。また、シンギュラリティ、つまり技術的な特異点がくるということについても、やはり抑制的な意見が多いです。シンギュラリティというのは、人工知能が自分の能力を超える人工知能を自ら生み出すことができる時点をさします。1より少しでも大きな数字を何度も掛け合わせると非常に大きな数字が出来上がるように、この特異点の先には、圧倒的な知能が誕生して、人類の進化や歴史にポジティブにもネガティブにも大きな影響を与える可能性があるということを示唆します。

“人工知能は人間を超えるのか”の著者である松尾豊氏は、「人工知能が人類を征服したり、人工知能を作り出したりという可能性は、現時点ではない。夢物語である。」と明言しています。その根拠を非常に単純化すると“人間=知能+生命”であるからとしています。「生命の話を抜きにして、人工知能が勝手に意志を持ち始めるかもと危惧するのは滑稽である。」と結論つけています。

“AI vs 教科書が読めない子供たち”の著者の新井紀子氏は数学者でありますが、やはりシンギュラリティが到来することはないとしています。「つまり、“真の意味でのAI”が人間と同等の知能を得るには、私たちの脳が、意識無意識を問わずに認識していることをすべて計算可能な数式に置き換えることができる、ということを意味しています。しかし、今のところ、数学で数式に置き換えることのできるのは、論理・統計・確率で言えることであり、私たちの認識を、すべて論理・統計・確率に還元することはできません。」

さて、シンギュラリティに関しては否定している新井紀子氏ですが、将来人間の仕事の多くはAIに置き換えられると予想しています。また、AIの導入過程でホワイトカラーは分断され、AIにはできない仕事をする人材は不足して満たされることはないと予測しています。

東洋経済新報社の“ビジネスパーソンのための決定版人工知能超入門”にはケーススタディが多く記載されていました。音声認識技術を利用したヘルプデスクでの一次回答の自動化。事故を起こさない車の開発、障碍者や高齢者でも扱える車の開発。膨大なユーザと紐づけて広告を配信する機能の最適化。エッジにある機械にAIを搭載しネットワーク化して相互連携を実現。物流のピッキングをするロボットの動作プログラム。熟練の技の配車計画業務のAI化。健康診断の画像診断を医師との連携で実施。人材の選考過程や人事評価への利用。金融における与信審査、不正取引検知、投資ファンドの運用、コールセンタのオペレータ支援。

今回の第3次人工知能のブームにおいては、人間のように考える人工知能やシンギュラリティへの抑制的な態度が、かえって地に足がついたアプローチや発達過程を想起させ、具体的なAI技術のユースケースが刻々と増えています。今日帰宅したら、Google Homeに“ただいま。今日は勉強したよ”と言ってみます。

関連記事