ホーム リーダーシップ ボストンでスペンサーのセリフを考える ~ 日本ストラタステクノロジー 社長ブログvol.8

ボストンでスペンサーのセリフを考える ~ 日本ストラタステクノロジー 社長ブログvol.8

このブログの原稿はボストンのローガン空港で書いています。昨日は10数年ぶりにレッドソックスの野球の試合を見に行きました。ストラタス本社のスタッフで日本育ちの台湾人のマネージャが、フェンウェイパークの素晴らしい席を予約してくれたのです。試合は4対3でホームチームが勝ちました。セカンドのエラーで決勝点が入ったのはやや残念でしたが、2本のホームランを見ることができて満足しました。ライトに1本、そして有名なグリーンモンスター越えで、レフトに1本です。現地では試合中に楽器を鳴らす応援はなく静かに観戦するのですが、ピンチの際にピッチャーが追い込むと、観客が総立ちになり拍手で応援します。ホームのピッチャーが抑えると大歓声です。

また、攻守交替時に音楽が流れ、観客がダンスを披露しているのを大画面に映してスタジアム全体で楽しみます。若者の上手なダンスも、年配者のぎこちない姿も大歓声に包まれて、ますます張り切ってダンスします。7回には“わたしを野球に連れて行って”(Take me out to the ball game), そして8回には“スイートキャロライン”をみんなで大合唱します。私も知っているフレーズだけ声をだしました。ホットドックやピザの味もそれなりに良く、ビールも美味しく飲め、アメリカの庶民の楽しみを堪能した気がしました。最近は所得格差の広がりや、地域間の分断が報道されることも多く、政治・外交の混乱が報道されるアメリカです。しかし、経済状況も比較的良く失業率が低く、庶民の健全さや真っ当な暮らしぶりは、少なくともマサチューセッツ州では変わらなく感じられます。

ボストンは、私が丁度社会人になったころから読み始めた、ロバート・B・パーカーという作家のスペンサーシリーズの舞台です。ロバート・B・パーカーはダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーの影響を受けていて、ハードボイルド小説の人気作家でした。私立探偵のスペンサーと恋人のスーザンや仲間のホークとの会話がすごく魅力的です。最初に読んだのは “初秋”(Early Autumn)だったと思うのですが 菊池光氏の翻訳で読みました。しかし、会話の素晴らしさを直接的に味わいたくて、それ以降はペーパーバックで読みました。読了に時間はかかるのですが、少しは英語の勉強にもなった気がします。

菊池光氏は、英国のディック・フランシスの競馬シリーズで翻訳しています。こちらは、学生時代から読んでいたのですが、やはりシリーズの途中からペーパーバックで読むようになりました。私のこれまでの人生で一番好きな作家でした。2010年ころにロバート・B・パーカーとディック・フランシスが相次いで亡くなった時には、彼らの新しい作品が読めなくなることに唖然としました。人生の大きな楽しみが失われたような気がしました。ボストンのダウンタウンに来ますと、いくつかの通りの名前が、今でもスペンサーシリーズを思い出させます。

今週はテレビを観ますと、ハリケーンのFLORENCEが東海岸を直撃するというニュースが放送されていました。“Monster” storm menaces coast.”というのが新聞の見出しです。直訳すると“怪物のような嵐が海岸線に脅威をもらたす。”ということでしょうか。水害や強風による被害、そして電気をはじめとするライフラインの遮断が広い範囲で想定されると報道され、大規模な避難がされています。なかにはAirbnbで内陸に貸家を見つけて移動する人もいるようです。

日本でもアメリカに出張する直前に台風21号と、北海道での地震が続きました。かの国の大統領が世界的な気候変動の影響を認めないのは全く理解できないのですが、自然災害に対する無力感は年齢を重ねるごとに増してきます。なぜ日本で2番目の国際空港が海水に覆われるのだろう。なぜ地震で液状化がおこり、さらに200万世帯以上のライフラインが一気に影響を受けるのだろう。開発時の設計者や施工者の問題として人災であると喧伝するメディアもありますが、私は自然に対して畏怖する気持ちや人間の無力感のほうが勝ります。

多分、私のこのブログが紹介される弊社のメールニュースが送られる頃には新製品「ztC Edge」の発表があると思います。ストラタスの製品は無停止型を標ぼうしていますので、ミッションクリティカルな分野で多く使用されています。従来は決済システムを含む金融関連分野での売上が一番大きかったのですが、最近は産業オートメーション分野の売上が拮抗するようになっています。それはエネルギー関連や上下水道の管理、そして止めてはいけない工場のライン制御などです。それに交通機関に関連するシステムや、小売りの現場で使用されるシステムなどを加えますと最大の売上構成比の領域となります。それは最近広まっている言葉を借りますと、エッジコンピューティングの領域です。新しく発表される製品はストラタスのDNAを継承し、小ぶりでも高可用性・無停止型の特徴を活かし、このエッジコンピューティング領域の発展に貢献してくれるものと確信しています。実際に米国では大規模なプラントの刷新プロジェクトに、当社のftServerと今回発表するエッジコンピューティングに特化したサーバの組み合わせで、何百台も採用するという計画があります。また、家族経営のIT専門家がいない工場で、ゼロタッチ(運用管理の工数が最少)という特徴が有効となり採用されています。今後も幅広い分野での採用ケースが考えられます。

「おまえが売るサーバで、世の中全部を変えることはできないし災害もなくならない。おまえの胸にはSのマークはないし、高いビルをひとっ飛びにはできない。それでも、採用してくれた場所では、止まらずにやり続けるんだ。それがおまえのやるべきことだ。」

私立探偵のスペンサーがこんなセリフを言うことを夢想しながら、空港で最後の1本のサミュエル・アダムズを飲みました。そういえば、「ビールをチビチビ飲む人間は信用するに値しない」というセリフもあったな。

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