ホーム エッジ コンピューティング チョコ停~生産ラインの厄介なトラブル

生産設備のチョコ停は生産に携わっている人にとって頭の痛い問題です。原因もはっきりせず困っている人も多いのではないでしょうか。ここでは、チョコ停の定義や発生する原因、その対処法、さらにチョコ停に対してエッジコンピューティングができることについて、可能な限り考えてみます。

チョコ停とは?

チョコ停とは製造設備が短時間止まってしまうことです。「チョコっと停止」、あるいは「チョコチョコ停止」の略と言われています。なお、長時間止まってしまうものをドカ停といい、こちらは「ドカっと停止」の略。チョコ停の止まっている時間は数秒から数分、ドカ停は約1時間以上です。
チョコ停は前触れもなく突然発生することが多く、すべての製造設備で必ず発生するとも限りません。設備の電源を落として再起動すると問題なく回復することもあれば、放っておいても自然に回復する場合もあります。つまり、発生原因がすぐには分からず、予測も難しいことが多いのです。そして、これが、生産技術者にとって頭の痛い問題となっています。

チョコ停が見逃される理由

チョコ停に限らず生産設備のトラブルには必ず原因がありますが、多くの場合、ある特定の条件によってトラブルが発生します。この条件を探し出して対処するのも生産技術者の仕事ですが、チョコ停の場合にはこの特定の条件を探し出すのが難しい、あるいは手間がかかることがよくあります。なぜかというと、特定の条件を満たせば必ずチョコ停が発生するとは限らず、再現性が低い場合が多いからです。
また、生産技術者が多忙であれば、数秒のチョコ停がごくたまに発生する程度では、原因追及にかける手間を考えると、放置した方がコストと時間が有利と判断している場合も多いでしょう。つまり、ある程度のチョコ停は発生するものと許容して、生産ラインを運用している場合もあるのです。
ただし、チョコ停が頻発するようになるとドカ停や故障につながるケースも増加し、注意が必要です。このために設備の機構部にセンサーを設置し、チョコ停を監視している生産ラインもあります。このような場合、チョコ停が頻発するようになると手を打ちますが、それほどでもない場合には手を打たず監視を続けるという運用が多いです。

チョコ停を減らす必要性

原因究明に手間がかかるため放置されることもあるチョコ停ですが、製造設備の稼働率を下げることになるので、減らさなくてはなりません。例えば、仮に1時間に5分のチョコ停があったとすると設備の稼働率は時間ベースで8~9%程度低下します。この数字はかなり多めの発生頻度ですが、チョコ停が設備の稼働率低下を招くことが理解できるでしょう。また、上述したように、チョコ停が頻発する場合には重大なトラブルの予兆と考えることもできます。
つまり、小さなチョコ停でも見逃さず、少なくとも、チョコ停の発生頻度を把握しておくことが設備の稼働率の維持と重大なトラブルの回避に重要であると言えるでしょう。

現場で検証できるチョコ停の発生原因

チョコ停の発生原因として考えられるものはたくさんありますが、比較的容易に検証可能なものは以下の2つが代表的です。チョコ停が頻発したら、まずこの2つを疑ってみましょう。

センサーの取り付け不良

多くの場合、設備の要所にはセンサーが取り付けられており、製品のハンドリングミスの検出や機構部の制御をつかさどっています。このセンサーはねじ止めされていることが多く、稼働時や運搬時の振動によってねじが緩み、センサーの位置がずれてしまう場合があります。センサーの位置がずれると、本来設定されたしきい値を超えるべき場合に正しく感知しなくなってしまいます。要するに、振動によって位置が微妙に変化して、条件が成立してもチョコ停が発生したり発生しなかったりするのです。
ここから、チョコ停が発生したときに、ねじ止めの緩みを発見して締め直すことでチョコ停がなくなったら、センサーの取り付け部のねじの緩みが原因と考えられます。

熱による影響

現代の生産設備はほとんどがコンピュータによる制御を行っています。このため、熱でCPUの動作が不安定になると、装置の制御システムに影響が出ます。熱は空気に乗って流れているために、装置内の空気の流れの変化によってチョコ停が発生したり発生しなかったりするのです。
ここから、チョコ停が発生したときに、制御装置のふたを開け、扇風機で冷却して、チョコ停がなくなったら、熱による影響と考えられます。

チョコ停を回避するために現場でできること

ねじ止め部の確認

上述のように、センサーのねじ止めが緩んでくるとチョコ停が発生しやすくなります。定期的にねじ止めの緩みをチェックしておくとよいでしょう。また、機構部のねじの緩みも余計な振動の発生につながるので、これも定期的にチェックしておきましょう。

冷却ファンの確認・冷房の強化

冷却ファンがきちんと回るかどうかの確認を定期的に行いましょう。場合によっては冷却ファンの交換・増設を考えることが必要になるかもしれません。また、工場内の冷房を強化することも有効でしょう。特に夏場は注意したいところです。

ゆとりを持った運用

また、温度やタクトタイムなどが、設備メーカーが保証した稼働条件ギリギリの状態で使わないことも、チョコ停回避に重要です。

チョコ停の原因を特定するためにエッジコンピューティングができること

上記の方法でチョコ停の原因が特定できない場合、あるいは再現性の低いチョコ停の発生原因を効率的・体系的に特定したい場合、エッジコンピューティングによる常時監視を導入するという方法があります。
設備の可動部に動きを検出するセンサー、さらにほかにも考えられる限りの原因に対応したセンサーを、異常が発生すると思われる場所に取り付けます。そして、可動部に設置したセンサーが反応すれば、チョコ停が発生したタイミングと考えます。加えて、可動部以外のセンサーについてもそのときの反応を検出して解析します。これにより、より具体的・客観的なデータに基づいて対応を考えることや、データをグラフに表してより視覚的に解析することが可能になります。これを「チョコ停の見える化」と言います。
エッジコンピューティングを常時監視に用いるメリットは、センサーから収集したデータがエッジサーバに自動的に蓄積されるところにあります。そして、ある程度蓄積された状態でクラウドかオフラインでデータを吸い上げればよいのです。このことから、再現性が低くいつ発生するか分からないチョコ停の監視を、人が装置に張り付いて常時監視しているよりも効率的に行うことができるようになります。
なお、エッジコンピューティングの導入はあと付けでもできる場合がありますが、予算の都合がつけばあらかじめエッジサーバのような機器を導入しておくとよいでしょう。チョコ停の検出だけでなく製品の検査や予知保全など、今後さまざまな応用が期待されています。
あるいは、購入しておいたエッジサーバにデータ収集を行うアプリケーションをインストールしておき、チョコ停が無視できなくなったタイミングからエッジコンピューティングによる原因特定を行うということも考えられます。一度に使える予算が限られていて、本格的なエッジコンピューティングを一気に導入しづらい場合に有効でしょう。

やっかいなチョコ停にも対策はある

以上、チョコ停の発生原因と、現場で検証できる対応を中心に紹介しました。チョコ停は、発生原因がつかみづらく生産技術者を悩ませる厄介者ですが、対策がないわけではありません。本稿で紹介したように、近年製造業への活用が注目されているエッジコンピューティングを使うこともでき、対策の選択肢は増えていると言えます。大きな停止ではないので発生しても放置されがちですが、稼働率低下の一因となることは間違いありません。効果的な対策を行って生産効率の向上を目指しましょう。

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