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製造業におけるデータ活用とは?現場が抱える4つの課題と解決策をわかりやすく解説

近年の製造業では、製造プロセスの課題や技術継承の問題をデータ活用で解決できることに関心が寄せられています。しかし、「大量のデータを収集しているが、どう活用すればいいかわからない」と悩む現場責任者もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、製造現場のデータ活用で現場が抱える課題とその解決策、データ活用のメリットを紹介します。データ活用が製造現場の改善につながる理由や具体的な取り組みを理解し、自社へ展開していきましょう。

製造業におけるデータ活用とは

製造業におけるデータ活用とは、生産性や品質を向上させるために、自社内で発生・蓄積されているデータを利用することです。
製造現場では、設備の稼働状況を可視化したり、製品の出来栄えを数値化したりするために、さまざまなセンサーからデータを収集しています。センサーやデバイスをネットワークに接続すれば、リアルタイムでデータを分析することも可能です。製品の加工精度を製造条件にフィードバックするシステムを取り入れて、加工ばらつきを小さくしている企業もあります。
経済産業省の「2022年版ものづくり白書」によると、ものづくりの工程・活動においてデジタル技術を「活用している」と回答した企業は67.2%にものぼります。
このように、リアルタイムでさまざまなデータを収集して製品や設備の状態を可視化し、勘や経験に頼らない生産活動にシフトする企業が増えてきているのです。
⇒参考:2022年版ものづくり白書 | 経済産業省(PDF)

製造業でデータ活用が注目されている背景

製造業でデータ活用が注目される背景のひとつに、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタル技術の進化があります。デジタル技術の進化により、大量のデータのなかから企業にとって価値ある情報をすばやく見出せるようになりました。つまり、データが企業の課題を解決するための資源として認識されるようになったのです。
実際に、デジタル技術を活用している企業は、以下のような効果が出ていることを実感しているようです。

  • 生産性の向上
  • 作業負担の軽減や設備稼働率の向上
  • 開発・製造等のリードタイムの削減
  • 在庫管理の効率化
  • 品質の向上
  • 生産態勢の安定(設備や装置の安定稼働)

このように、製造業の業務効率化や生産性向上を実現するための手段としてデータ活用が有効であるという認識が広まっています。

製造現場が抱えがちなデータ活用に関する4つの課題と解決策

2022年3月に経済産業省から公表された「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」によると、データ収集をしている企業の約40%が「データ利活用があまり進展していない」と回答しています。
なぜデータ利活用が進展していないのでしょうか。製造現場のデータ活用でよくある課題と解決策について、4つのポイントから見ていきます。

1.経営陣と製造現場のギャップ

製造現場でのデータ活用は、小さな改善の積み重ねからスタートすることが重要です。しかし、多くのケースで経営陣は、データ活用が企業全体の活動に大きな成果をもたらすことを期待しています。そのため、経営陣の期待と実際の成果にギャップが生じ、製造現場へのデジタル技術導入は企業への貢献度が低いと判断されてしまうのです。
経営陣から理解を得るには、長期的な視点でデジタル化を推進する必要があり、製造プロセスをデジタル化したあとのビジョンを明確に示さなければいけません。製造現場全体から得られるデータにより自社の状況が正確に可視化され、経営判断や意思決定に役立つことを強調して伝えていく必要があるでしょう。

2.各工程のデータ連携

製造現場の各工程でそれぞれの責任者が配置され、独立して管理しているケースが多く見受けられます。そのため、工程ごとにデータ収集のデバイスやネットワークが最適化されてしまい、異なる工程からのデータを連携できないという課題があります。
生産ラインの改善には、各工程で収集した製造データを整理し、連携させることが求められます。しかし、生産設備に使われるデバイスやネットワークは通信規格が異なるため、同じ仕様に統一することは現実的ではありません。
解決策のひとつとして、プログラムが可能な倫理回路を制御するPLC(Programmable Logic Controller)とサーバの間をつなぐ通信システムを導入する手法があります。さまざまな通信規格に対応しているデバイスをPLCに接続し、ノーコードで接続設定ができるソフトウェアを用いれば、生産設備を改造することなく簡単にデータの一元管理が実現します。

3.制御装置から出力されるデータの質

制御装置は寿命が長く、なかにはインターネットに接続できないものや、データ形式がそのままでは使えないものもあります。そのため、デジタルデータを取得できるデバイスの設置や、IT技術で使えるデジタルデータへの変換が必要です。
たとえば、アナログ計器を使用している場合であれば、デジタル式に置き換える、計器をカメラで撮影してOCR(光学的文字認識)で読み取った情報をデジタルデータとして出力するといった方法もあります。
このように、IT技術で使えるデジタルデータを取得するには、後付けでデジタルデータを収集、出力するデバイスが必要になります。さらに、リアルタイムでデータを収集、分析するためにはネットワークへの接続も必要です。
しかし、ネットワークに大量のデバイスを接続すると、通信速度が遅くなるという懸念があります。そのため、エッジコンピューティングでデータを収集、一次処理してネットワークにかかる負荷を軽減する手法が注目されているのです。

4.データ活用ができる人材の不足

「2022年版ものづくり白書」によると、IT人材の不足を感じている企業は約88%にものぼります。
少子高齢化でどの産業でも人材が不足しているなか、高いスキルを持つIT人材を製造業で採用することは難しいでしょう。そのため、自社の非IT系人材にITスキルを身につけてもらう必要があります。

現在はノーコードで業務アプリを作成できるツールがあるため、パソコン操作のスキルと業務改善に取り組む意欲があれば、スキル習得後はデータを活用できるシステムを開発できます。社内の業務に精通している社員が作成したアプリケーションであれば、外部業者よりも現場で使えるシステムになる可能性が高いでしょう。
たとえノーコードのツールに限界がきても、システム開発プロセスへの経験をへているので外部業者への依頼もスムーズに進められます。

製造業におけるデータ活用の5つのメリット

製造業でデータを活用することにより、どのようなメリットがあるのでしょうか。順番に解説します。

1.生産性の向上

データを活用することにより、製造現場の生産性向上が期待できます。いままで勘や経験に頼っていた設備の状態が数字で見える化され、データに基づいた判断で業務を進められるからです。各設備の稼働データから生産ラインを見える化できれば、稼働率を改善すべき設備がひと目でわかります。
生産性を向上させるための施策だけに集中できるので、すぐに効果が実感でき、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

2.ノウハウの言語化

デジタル技術を駆使することで熟練者のノウハウを標準化できます。なかには、自動化を達成する企業も出てきています。
センサーの進化やIoT化により、職人の感覚や設備内の環境データをリアルタイムに取得できるようになりました。取得した多種多様なデータと完成品の品質をひも付けることで、熟練者のノウハウを詳細に言語化できるのです。
熟練者が退職しても、データをもとに高い技術力を再現できるため、企業の競争力維持にもつながります。

3.ロスの削減

生産活動におけるロスを削減できることもデータ活用のメリットです。
生産ラインのロス発生数をリアルタイムで監視、可視化することで、設備や生産条件の異常に早く気づけます。データを集計するまで見逃されていた小さな異常も発見できるでしょう。異常が起きたまま設備を稼働させている時間を短縮できるので、製品ロスの増加を抑えられます。
また、ロスが増加したタイミングのデータを分析することで、不良品を増加させている原因を分析できるというメリットもあります。

4.生産ラインの品質改善

各工程のデータを連携し、原材料の投入から検査工程までのトレーサビリティを強化できれば、生産ラインの品質改善を実現できます。すべての部品の製造条件をひも付けられれば、検査工程で発見された不具合品と正常品のデータを比較し、不良を発生させる原因を突き止められるでしょう。
また、加工条件と品質の関係を分析し、傾向やパターンを見つけることで、設計部門に製品の改善ポイントを正確に伝えることも可能です。
このように、データ活用は生産ラインの品質改善にも役立てられます。

5.付加価値の向上

製品を販売したあとの稼働データを分析し、製品設計や工程設計に反映することで、付加価値の向上することができます。
例えば、顧客の稼働状況や使用環境を遠隔で分析し、最適な運転を提案することで節電という付加価値を付与している企業もあります。
このように、製品に取り付けたセンサーから得られるデータを活用し、いままでにない高いレベルの顧客体験を提供することで、自社製品の価値が向上するのです。

エッジ コンピューティング を活用し、製造現場のデータ活用を

製造現場で発生するデータを活用することで、製造プロセスの生産性や品質の改善に取り組む企業が増えています。
課題解決に必要なデータを生成するには、新たにセンサーを取り付けたり、アナログデータをデジタル化したりするなどの取り組みが必要です。また、データを活用して業務の改善につなげていくには、生産ラインの各所に分散しているセンサーやデバイスのデータを1か所に集約し、分析する必要があります。
しかし、生産ラインからの膨大なデータをすべてクラウドサーバに送信し、処理するとネットワークに大きな負荷がかかります。このため、よりデータが発生する現場に近いところで一次処理を行うエッジコンピューティングの導入が近年注目されています。
そのような製造現場でキーとなるエッジコンピューティングには、高性能や信頼性、セキュリティーなどの用件が求められます。また、ITに詳しくない人でも簡単に運用できるなどの保守性も重要です。
⇒製造現場のデータ活用のためのエッジ コンピューティング については、こちらの記事をご参照ください。
エッジ コンピューティングにおける可用性について|Stratus Blog

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