ホーム エッジ コンピューティング ビッグデータの活用事例 もう始まっているビッグデータの活用

先端的な技術分野で、まだまだ身近でないもののように感じるビッグデータ解析ですが、少しずつ活用は始まっています。ここではビッグデータ解析の活用事例とそれによるメリットを紹介しながら、特にIoTや産業分野についての事例を紹介します。

ビッグデータ活用の目的

ビッグデータを解析する目的は、一見すると無秩序で法則性のないデータからも何らかの法則性や相関関係を見いだすことです。そこから新しい知見を導き出して、売上増加や業務の効率化を図るところにあります。

人間の経験や勘による意思決定は不確実性が高く、当たるときは当たりますが、外れる場合も多いです。また、意思決定が行えるような勘を身につけるには長い期間が必要です。加えて、顧客のニーズが多様化していることや市場変化の速度がますます速くなってきているため、長年かけて培った経験や勘も短期間で通用しなくなることが大いにありえます。このような状況のため、大量のデータを人手によらず解析することで、新しい知見をスピーディに提供していくことが求められているのです。

あるいは、従来は定量化の難しかった人間の好みや感性などから、法則性や何らかの傾向を把握するのにもビッグデータ解析は有用と考えられています。これはつまり、従来対応の難しさから対象外とされていたようなデータからも新しい知見を発掘できるということです。

身近なビッグデータ解析の活用事例

それでは、実際のビッグデータの活用事例を見ていきましょう。

自動販売機での商品陳列

ビッグデータ解析から法則を生み出す好例としてよく取りざたされるのが、商品の陳列です。ある飲料メーカーでは、それまで当たり前とされていた、売れ筋の商品を上から並べていく「Z字型」の自動販売機の商品陳列を変えて、注力している商品を下に置くようにしたのです。これは、自動販売機に視線を読み取るカメラ(アイトラッキングカメラ)を設置し、「購買者の視線」というビッグデータを解析したことから導き出された知見です。結果として、同社は数パーセントの売上アップを実現しました。

自動販売機の多くは、商品サンプルが購買者より高いところに陳列されています。地震時の転倒防止のため、コンクリートの台座の上に固定して設置してあることが多いからです。確かに、その中で自分の目の高さよりもやや低い位置にある方が見やすいことは言われてみれば当然のように思われます。しかし、「Z字型」の陳列のようにすでに常識とされている習慣を覆すようなアイデアは、人間だけではなかなか出せないものです。

需要変動を把握して仕入れや商品開発に活用

ビッグデータ解析の代表的な活用例のひとつが需要予測です。ある回転寿司チェーンでは、皿にICタグを取り付け、どの皿がどれくらい売れたかを把握しています。会計時に店員が皿にリーダをかざすとデータが瞬時に取得できるのです。このデータは年間数億件におよび、こうしたビッグデータを解析することにより、売れ筋や季節の需要変動などを把握して、仕入れ量の調整や商品開発に活用しています。

顧客動向を解析して経営の意思決定に

コンビニエンスストアでの売上解析と在庫管理に活用している例もあります。あるコンビニエンスストアでは特定の商品の売上のうち6割が、たった1割のヘビーユーザーによって支えられていることが分かりました。これは、電子マネー決済の情報をビッグデータ解析することで得られた知見です。このコンビニエンスストアでは、特定の商品には熱心なファンがいると判断し、販売を続けています。

コンビニエンスストアにとって重要な収益源となっているのは、目的の商品とあわせて購入される「ついで買い」。一見すると売上が伸びず販売終了にせざるを得ないと思われる商品でも、熱心なファンがいるとわかることで、集客につながる重要な商品として新しい価値を見いだすことができるのです。

人間の感覚もビッグデータとして解析

ある下着販売サイトでは、返品された下着と、顧客情報をビッグデータ解析することによって、下着メーカーで微妙に異なるサイズのばらつきを数値化することに成功。これにより、購買者が自分のサイズを入力すると、そのサイズに合ったメーカーの商品のみが表示されるシステムを構築しました。

これは、人によってまちまちな下着のフィット感や着心地をビッグデータ解析して、それぞれの顧客に最適な商品を提示することができたといえるでしょう。下着のフィット感や着心地は人間の感覚や感性に属するため、一般的には数値化することが難しいと考えられてきましたが、このような情報も工夫次第ではビッグデータとして解析ができるという一例です。

産業・IoT分野でのビッグデータ解析の活用事例

では、産業分野やIoT分野での活用事例を見ていきましょう。

道路状況をリアルタイムで把握・予測

自動車に通信機能を持たせて交通情報を解析している事例があります。通信機能を持たせた自動車、いわゆるコネクテッドカーによって走行情報を収集し、これをビッグデータ解析することにより、渋滞情報や、事故情報を得ることが可能です。こうしたデータは、渋滞の回避や事故の防止などに活用されます。

仕組みとしては、タイヤが1秒間に何回転したかをセンシングして、回転数が増加もしくは一定であれば渋滞は起きていないと判断するというもの。つまり、車速の変化から道路状況を判断しているわけです。さらに、自動車にGPS受信機を設け位置情報をセンシングし、個々の車速の変化と合わせてビッグデータ解析を行えば、どの地域でどれくらいの渋滞が発生している、あるいは発生しそうかを判断できます。この場合、自動車からの情報はリアルタイムで刻々と変化していくので、ビッグデータ解析もリアルタイムの処理が求められます。

効率的な船舶の運航を実現

同じように、センシングから得たビッグデータの解析により船舶の運航を効率化した事例もあります。ある商船会社では、船舶にセンサを取り付け、エンジン回転数や走行速度、海流の速さなどを収集。これをビッグデータとして解析し、最適な運航計画を作成することに成功しました。この計画を用いて実際に運航を行ったところ、燃料消費量が1割削減されたという成果を上げました。一般の人からすると、1割というとたいしたことのないように感じますが、商船会社では多数の船を運航しており、1回当たりの航海が長い場合も多くあります。この中での1割は大きな経費削減の効果といえるでしょう。

採掘の最適化に貢献

ショベルカーやブルドーザーなどの建機の効率運用に貢献している事例もあります。ある建機メーカーの建設機械にはIoTに対応したセンサがついています。このセンサを用いて、位置情報や稼働状況をモニタリングしてビッグデータ解析をリアルタイムで行うことにより、稼働効率の向上や、故障の予測などに利用ができます。これは主に海外の鉱山などで採掘を行う場合に威力を発揮します。海外の鉱山は採掘の範囲が非常に広い場合が多く、できるだけ最短距離を選択し、空の荷物を運ぶ回数を減らすことが求められます。そこで、エンジンの起動時間や移動距離、移動方向などをセンシングしてこれをビッグデータ解析することにより、採掘の最適化が実現されるのです。

ビッグデータ解析はよりリアルタイム志向へ

以上、ビッグデータ解析の活用事例を見てきました。これらの事例からもわかるように、リアルタイムでビッグデータ解析を行う必要性はますます高まってくるでしょう。特に生産分野でのスピードを要求される応用には、スピードの点で有利な エッジ コンピューティングの適合性が高いと思われます。この生産分野でのビッグデータ解析を考えている場合には、エッジコンピューティングの導入も選択肢のひとつです。

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