ホーム エッジ コンピューティング エッジデバイスとは?製造現場での役割やAI、IoTとの関連性、活用例を解説

エッジデバイスとは?製造現場での役割やAI、IoTとの関連性、活用例を解説

高速インターネットの普及やITの進化を背景に、製造業でもスマート化による業務効率化や故障予知などが進んでいます。そこで重要になるのが、現場でリアルタイムの情報収集を可能にするエッジデバイスです。

今回は、製造業でのスマート化を推し進めるエッジデバイスについて、その種類や役割、AI、IoTとの関連性、活用例をお伝えします。製造業の製造管理担当者で、エッジデバイス活用によるスマート化を検討している際にはぜひ、参考にしてください。

製造業や生産管理分野におけるエッジデバイスとは?

製造業におけるエッジデバイスについて理解するには、まずエッジデバイスの概要を知ったうえで、どのような種類があるのかを把握しなければなりません。ここでは、エッジデバイスの概要と、特に製造現場で扱われるエッジデバイスの種類についてお伝えします。

エッジデバイスとは?

製造業におけるエッジデバイスとは、機器や設備に一番近いレベルでデータ収集にかかわる単機能なもの、もしくはある程度の処理機能を持つ機器や装置です。

機器や設備に近い場所に置いて、リアルタイムでデータを収集できる点がメリットといえます。また、ある程度の処理機能を持つ機器であれば、遅延なくその場で処理ができるため、ネットワークやデータセンターにかかる負荷軽減も可能です。

なお、エッジデバイスと同じような用語で「IoTデバイス」があります。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」なので、あくまでインターネットにつながっていることが前提です。一方、「エッジ」は末端というだけでインターネットへの接続を前提にしていません。どちらも末端に存在することが想定されたものですが、その中でもインターネットにつながるエッジデバイスをIoTデバイスと呼ぶと言えるでしょう。

エッジコンピューティングについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
エッジコンピューティングがなぜ注目されるのか―クラウドやオンプレミスとの違いとは | Stratus Blog

製造業での主なエッジデバイスの種類

ひと口にエッジデバイスといっても、その種類は多様です。ここでは、特に製造業での主なエッジデバイスの種類を紹介します。

  • データを収集するもの
    センサーやカメラが該当します。機械の動作状況の確認、製品の品質や外観検査、製造工程の監視などを行います。利用する目的に応じて、加速度センサーや振動センサー、あるいは高解像度のカメラやマルチカメラシステムなど、多くの種類のデバイスを使い分けます。
  • データを収集し機械を制御するもの
    代表的なのがPLC(Programmable Logic Controller)でしょう。PLCとは、機器や設備を自動的に制御する装置です。機器や設備に自動的に実行させたい動作をPLCに設定することで、接続した機器や設備の遠隔操作が実現します。
  • 収集したデータを外へ送信するもの
    一般的にエッジデバイスに含まれないものの、ゲートウェイにセンサー機能を持つものをエッジデバイスとして扱うこともあります。ゲートウェイは、エッジデバイスとクラウド間の通信を仲介する役割を担い、複数のエッジデバイスを集約したデータ処理を可能にします。
  • 収集したデータを処理するもの
    センサーやカメラなどのデバイスから収集されたデータを、現場で即座に処理するためのデバイスです。小型で省電力なシングルボードコンピュータ、組み込みシステムなどが含まれます。このうち複雑な処理が可能なデバイスを特にエッジコンピューティングと呼んでいます。
    また、モバイルデバイス(スマートフォン)、タブレットなどもここに分類されます。生産ラインの監視や作業指示、在庫管理のほか、アプリケーションを利用して生産ライン全体をリアルタイムで監視するといった処理を行います。

製造業におけるエッジデバイスの活用例

製造業でのエッジデバイスの活用例としては、次のようなものが挙げられます。

機械のモニタリング

センサーやカメラなどを用い、製造ラインや機械の稼働状況監視を行います。機械の動作状況をリアルタイムでモニタリングできるようになり、問題発生時の早期対応や生産性向上、製品の品質管理が可能です。

生産プロセスの改善

機械の稼働状況分析により、生産ラインのボトルネックを特定し、改善ができます。また、生産ラインの各工程での作業時間計測により、生産性の向上につながる改善策の立案も可能です。

在庫製品の管理

製品の在庫管理を効率的に行えます。倉庫にセンサーを設置して在庫の量や場所を監視できます。また、二次元バーコードを読み取る機能があるエッジデバイスを活用すれば、在庫の入出庫管理も可能です。

エッジデバイスとAIの親和性

2022年1月に株式会社グローバルインフォメーションから出版された市場調査レポートによると、製造業向けのIoTの市場は、2020年に全世界で1,753億米ドルだったのが、2026年には3,990億8,000米ドルにまで達すると予測されています。
参照:製造業におけるモノのインターネット(IoT)市場 – 成長、動向、COVID-19の影響、予測(2022年~2027年)|株式会社グローバルインフォメーション

急速に成長を続ける製造業でのIoTですが、大きな課題もあります。それは、IoTによって取得されるデータの量が大幅に増加し、クラウド上でのデータ処理や分析に限界が生じるようになっている点です。そこで今、エッジデバイスと親和性の高いAIとの組み合わせが大きな注目を浴びています。注目される理由としては、AIとの組み合わせにより、人間の判断が追いつかない大量のデータを解析し、知見を得られる点が挙げられます。

前述したように、エッジデバイスは現場で収集したデータをその場で処理することから、中央のデータセンターにかかる負荷の軽減が可能です。これにAIを組み合わせれば、データの処理だけではなく、分析や判断も現場で速やかに行えるようになります。
例えば、エッジデバイスが機械の異常を検知した場合、AIが異常の原因を特定し、メンテナンスの必要性を判断することが可能です。近年では、エッジデバイスにあらかじめAIが組み込まれた製品も提供されています。これによりデータを解析し、最適な生産ラインのスピードや製品の品質に影響を与える要因を、これまでよりも容易かつ迅速に判断できるようになるでしょう。

また、現場でのAIを活用したリアルタイムデータ分析には、高度な処理能力が求められますが、その処理が止まった際の影響は甚大です。具体的には、リアルタイムでの故障検知ができなくなることによるダウンタイムの増加、機器や作業員の安全性の低下などが考えられます。

そのため、複雑な処理が可能で、高い可用性を備えたエッジコンピューティングプラットフォームを検討すべきでしょう。また、セキュリティ機能や運用に負荷がかからないことなど、製造業でエッジコンピューティング活用に必要なプラットフォームの要件についてはこちらをご参照下さい。
製造業でエッジコンピューティングを活用するメリット・デメリットと必要な要件を解説 | Stratus Blog

製造現場の効率化・スマート化に重要なエッジデバイスの活用

エッジデバイスとは、機器や設備に一番近いレベルでデータ収集に関わる単機能なもの、もしくはある程度の処理機能を持つ機器や装置です。収集したデータを、ネットワークを通じてデータセンターに送信して蓄積するだけではなく、その場で処理を行えるエッジコンピューティングに分類されるデバイスもあります。

近年、製造業でもIoTの活用が進んでいますが、扱うデータ量が年々増大し、クラウド上でのデータ処理や分析に限界が生じるようになりました。
製造現場のスマート化に向け、エッジ側でより効率的かつ迅速にデータ処理を行うことが可能になる、AIと組み合わせたエッジデバイス「エッジAI」の活用も期待されています。エッジAIについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
エッジAI-熟練技術者の判断・経験を残すためのキーテクノロジー | Stratus Blog

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