先週、EMEAのストラタスの代表に「おめでとう!」とメールを送りました。EMEAというのは、欧州・中東・アフリカ地域の総称なのですが、ストラタスの代表はフランスのパリに在住しています。
メールを送ったのは、6月にボストン郊外の本社で会った際に、サッカーのワールドカップの話になったことを思い出したからです。彼はフランス代表をもちろん応援していましたし、チーム力に自信を持っている様子でもありました。私は日本代表に関して、予選突破は難しいと思うと言って、その時点では少し弱気な意見を述べました。
結果に関してはご存知のように、フランス代表は見事に決勝戦でクロアチアを破って優勝し、日本代表も前評判を覆して決勝トーナメントに進みました。ベルギーはイングランドを破り3位になったのですが、日本はそのベルギー戦では最後に力尽きましたが、ほとんどの時間帯でリードするような試合をしたのです。19歳のエースストライカーを擁するフランスと比べると、次のワールドカップにつながる選手の発掘が進んだとは言いにくいですが、日本チームが攻撃的に戦いゲームをリードしたことと、個々の選手のプレイが世界の強豪選手に通用したということは、次世代の選手に大きな勇気をもたらしたのではないでしょうか。
欧州の国の中では、島国であるという地理的条件や王室・皇室が存在するという国の成り立ちから、日本は英国との類似性を言われることが多いです。また、議院内閣制などは英国から学んだものです。また、産業全般の中で技術力を背景とする製造業の貢献度が高いことや、秩序が重んじられ真面目な国民性などからドイツとの類似性を言われることもあります。しかし、私個人の意見としては、日本が直面しているいくつかの課題を解決するにあたっては、フランスの経験そして各種政策を学ぶことが重要であると感じます。
1つには、少子化の克服です。フランスでは1994年に出世率が戦後最低の1.66に下がった時に真剣な検討が実施され、翌年に労働省が対策をまとめています。このままでは女性は育児と仕事と両立できないという事実を具体的なデータによりバックアップして対策を講じたことにより、2010年には出生率が2.00を超えました。日本では政治・行政レベルでの現状認識力がやや甘い時期が長く続いたと考えます。“保育園落ちた日本死ね”というブログを引用した国会の質疑が問題になったのは記憶に新しいですが、大胆な施策を実現したフランスの進め方が潔いと感じる反面、日本の対策の遅さが際立ちます。東京都は2019年度末までに待機児童ゼロを目指し、保育所整備や人材確保などを進めるようです。少子化の克服にける第一歩として期待したいと考えます。
2つ目には移民政策です。フランスでは第2次世界大戦以降、人口が急激に減少したことを背景に、積極的に移民の受け入れを行いました。安価で大量の労働力が必要になり、外国人労働者の受け入れを行いました。その後、1974年のオイルショック後に経済が減速したことを背景として、原則として移民受け入れの門戸は閉じられ、労働移民から家族呼び寄せや庇護申請による移住の流れへと置き換わっていったようです。ワールドカップの代表を見ますと、ご存知のように移民の子供等が大活躍しています。「ヤングプレーヤー賞」に選ばれた19歳のキリアン・エムバペ選手は、父親がカメルーン人、母親がアルジェリア人とのことです。これは協会やクラブが、人種を限定せず移民の子や外国で生まれた他国籍の選手にまで門戸を広げて強化を図っているからのようです。
しかし、フランスでの移民政策にも当然のことで光と影があります。移民受け入れによる労働市場や賃金への影響。そして、社会保障や治安維持の観点での社会コスト増などが影の部分です。翻って日本ですが、まさしく今週、政府が外国人労働者の受け入れ基準や支援策を検討する会議を開催したようです。実は、日本でもすでに外国人労働者は120万人を超えているようです。技能実習制度や留学生の週28時間までのアルバイトが含まれています。もちろん、外国人労働者の受け入れと移民政策は別物です。外国人労働者は「働いてお金を得るために来日する人」で、家族は本国に残して来日し、仕事が終われば帰国する人です。稼いだお金もなるべく日本では使いません。一方で移民は「住むため暮らすため」に来日するのであり、基本的にお金も日本で使いますし、定着して社会の構成員になります。現在の政策は外国人労働者を増やすが、移民は認めないということです。この政策を継続していて成り立つのか、個人的には少し疑問に思っています。フランスをはじめとする諸国の移民政策の光と影を学び、大きく舵を切るときが来るのではと考えています。
今回のブログは、サッカーのワールドカップの話に始まりましたが、ストラタスの提供するソリューションに直結した話にはなりませんでした。あえて、話を結び付けますと、優勝したフランスのパリの街でも、準優勝したクロアチアでも、そして3位のベルギーでも、ストラタスのサーバが提供するサービスが稼働しています。イングランドでも、ブラジルでも、メキシコでもストラタスのサーバが提供しているサービスで決済が行われていたり、電気・ガス・水道の社会インフラが運用されていたり、そして工場の製造現場が稼働しています。
改めて、グローバルカンパニーとしての矜持を感じました。