ホーム エッジ コンピューティング スマート物流とは?ITと物流の融合で何が変化する?意味や代表例を紹介

物流業界では、スマート物流が注目され、導入が進められています。スマート物流とはどういったものなのでしょうか。また、物流をスマート化することでどういった効果が生まれるのでしょうか。スマート物流の意味や注目される背景、応用される技術、スマート物流の代表例などを紹介します。

スマート物流とは

「スマート(Smart)」という言葉は、「賢く洗練された」という意味を持ちます。現代社会においては、高性能であることを指す際にも用いられる言葉です。物流の分野にも「スマート物流」という表現で用いられています。スマート物流は、ITを新たに導入または既存のシステムに組み合わせることで物流の効率化を図るしくみのことです。
物流にはさまざまな課題があり、従来の手法ではタスク処理が追いつかなくなっているのが現状です。実際に、大手運送会社が人手不足により業務の遅れを公表する、運賃の値上げに踏み切るなどしています。このような現状からも、物流業界には変化が必要とされていることが明らかです。
そこで注目されているのがITの活用です。さまざまな物流の課題に対し、ITを活用することで効率化に取り組む新しい物流の形態として生まれたのが、スマート物流です。

スマート物流が注目される理由

物流業界では近年、いくつかの課題が表面化し、対策が必要とされています。具体的に、どのような部分が問題となっているのかを見ていきましょう。

人手不足と労働環境

深刻度を増している物流業界での人手不足は、少子化と労働力人口の減少といった絶対数の問題だけではなく、労働環境にも起因しています。例えば、運送の分野では長時間労働や過重労働が問題視されており、働き手不足につながっています。
物流業界ではこのような課題に対し、解消に向けた取り組みが行われていますが、抜本的な解決策は見いだせていません。労働環境の改善や働き方の柔軟化、働きやすい職場づくりなどを進めながらも、別の角度からの取り組みが必要とされています。

EC拡大と小口配送増加

インターネットを利用したEC市場の急速な拡大と消費者のニーズの多様化により、小口配送が増加しています。そのため、これからの物流業界では、小口配送に対応する効率的な物流システムを構築することが求められています。配送業者には、荷物の引き渡し方法の細かい指示や時間指定など、より細かな顧客ニーズに応えることが要求されます。顧客の要望に応じて、荷物の受け取りや返品の手続きを滞りなく進められることも必要です。
EC拡大と小口配送増加によって、物流にかかわるすべてのプロセスに変化が生じています。それに対応するためには、高度な情報技術や人材の育成、効率的かつ円滑な物流システムの構築が求められます。

短納期化への対応

商品の配送は、早ければ当日に到着するサービスもあるほど短納期化が進んでいます。消費者がECを利用して買い物をすることが一般的になるなか、多くの商品を短納期で配送することが求められるようになりました。短納期化により、物流企業は、さらに迅速な配送を研究し実現することが求められています。そのためには、配送ルートの最適化や配送システムの改善など、多岐にわたる改善策が欠かせません。また、短納期化によって荷物の集荷や梱包作業、配送準備などの作業時間が短縮されることも考えられます。これによって、物流企業はより効率的に作業を行うことが求められるでしょう。

手作業による非効率な業務が多い

物流業界では、手作業による非効率な業務が依然として多く残っています。特に中小企業では、手作業による在庫管理や、紙ベースで複数の書類を用いる配送手続きなどの、旧態依然としたプロセスが多く残っていると考えられます。このような作業には人為的なミスが生じやすく、受発注の誤りや配送遅延を招き、顧客満足度の低下やコスト増大へとつながりかねません。

スマート物流導入のメリット

ここまでに見てきたような物流業界が抱える課題を解決するためには、ITを活用した効率化が必要とされています。スマート物流はそのひとつに位置付けられます。スマート物流のどのような特徴が課題解決に効果があるのかを具体的に見ていきましょう。

省力化・省人化・ワークライフバランス向上

省力化とは、自動化や機械化を進めることで作業を効率化し、人間の労力や時間を節約することです。省力化を積み重ねることで作業者1人分の作業を削減できれば、省人化が達成されたことになります。スマート物流を導入することで業務の効率化が進み、省力化・省人化が実現するため、人間が行う作業に余裕が生まれ、人材不足の解消にもつながります。また、これまで人間が行っていた作業を機械が代わりに行うことで、人間はよりクリエイティブな業務に時間をかけることができます。仕事へのモチベーションが向上し、さらにイノベーションが生まれる可能性も高まるでしょう。
省力化・省人化の効果は、人手不足解消の方向に働くだけではありません。人員の配置やそれぞれの働き方にも余裕を持たせることができ、従業員のワークライフバランスが向上します。ワークライフバランス向上によって労働環境が改善すれば、離職率の低下にもつながり、さらに人手不足の解消が期待できるでしょう。

標準化・ミスの防止

スマート物流によって業務が自動化されることにより、作業工程により一貫性が生まれます。機械やソフトウェアによる作業は再現性が高く、定められた同じ手順に従って行われます。人間が作業を行う場合の体調・集中力の変動などによるバラつきが排除され、作業の標準化が可能になります。作業が標準化されるのと同時に、自動化によって人為的なミスを防ぐことが可能です。これにより作業品質が向上し、品質を維持しながら製品やサービスの価格を下げることが可能になれば、市場競争力も向上するでしょう。

生産性向上・利益確保

スマート物流によって、配送ルートの最適化や在庫管理の効率化、作業の自動化などが実現可能です。人為的ミスや手作業によるロスを大幅に削減できることから、生産性向上につながります。また、スマート物流の導入によって、顧客サービスの向上も期待できます。配送状況のリアルタイム確認や、配達時間の変更などが可能になることで、顧客ニーズに応じたサービスの提供ができ、商談機会の増加も期待できるでしょう。

スマート物流に用いられている技術

スマート物流では次のような技術が応用されています。

IoT

IoTは、異なる種類のデバイスをインターネットに接続し、相互に通信することでデータを収集、解析、共有する技術です。スマート物流を含め、あらゆる産業におけるスマート化に欠かせない技術となっています。スマート物流でのIoTの利用例として、物流現場のさまざまな箇所にセンサーを設置して、荷物の位置や状態をリアルタイムで把握することが挙げられます。製品や物資の位置や状態を可視化し、リアルタイムに情報を受け取ることが可能です。また、在庫や配送の管理が容易になり、正確な配送スケジュールの立案やトラブル・状況変動への早期対応など、業務の迅速性も向上します。

AI

AI(Artificial Intelligence、人工知能)は、機械学習や深層学習、自然言語処理、画像認識などの技術を用いたシステムです。従来は「判断する」「判別する」という作業は人間にしかできませんでした。AIが実用化されたことにより、判断や判別といった作業を人間に代わって機械が実行することが可能になっています。
AIは、膨大なデータから最適な方法を見つけ出すことも可能で、使い方によっては人間を超える作業効率を実現できます。
スマート物流は、物流のプロセスを最適化することで効率的かつコスト効果の高い物流システムの実現を目的とします。ここにAIを活用することで、データの解析や予測能力などから、物流プロセスの自動化を進められます。そして、AIによってリアルタイムのデータを分析することで、製品や物資の配送ルート、在庫管理、配送スケジュールなどを最適化できるのです。

5G

5Gとは、第5世代移動通信システムのことです。4Gよりも高速の通信速度や低レイテンシーなどの特徴があり、高速で安定した通信が可能です。スマート物流への応用では、情報の送受信だけでなく、AGVのような機器の制御にも活用されています。
AGVについては、こちらで詳しく紹介しておりますのでご覧ください。
AGV(無人搬送車)とはー種類や導入メリット・組み合わせ可能な技術など |Stratus Blog

高速で安定した通信は、人間が近くにいない場所である機器を安全に稼動させるうえでも大きなかかわりがあります。5Gは、自動運転トラックやドローン配達にも欠かせない技術となると考えられています。

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングは、クラウドで集中的に処理を行うのではなく、ネットワークの末端(エッジ)に位置するコンピュータで処理を行うことで処理効率を高める技術です。すべてをクラウドに送るのではなく、エッジで処理するデータと、クラウドへと送るデータを状況に応じて振り分けることで高速処理を可能にします。
エッジコンピューティングを利用した物流システムは、情報をリアルタイムで処理することによって、迅速さと正確さを向上させます。在庫管理や配送ルートの最適化、荷物の種類に適した温度・湿度といった環境情報の監視などが可能になります。

エッジコンピューティングについて詳しくは、こちらをご覧ください。
なぜエッジコンピューティングが注目されているのか-クラウドやオンプレミスと比べての違いとは? |Stratus Blog

スマート物流の代表例

スマート物流は、実際に多くの物流の場面で運用されています。

ピッキングはロボットの時代へ

従来の倉庫でのピッキング作業といえば、人がカートを押しながら移動し、棚を回って必要な商品を集める方法が主流でした。この方法を大きく変えたことで注目されたのが、大手通販サイトAmazonの倉庫で導入された、ロボットを活用したピッキング作業です。従来の方法とは異なり、ロボットが棚を持って人がいる位置まで運んでくることで、作業者はほとんど移動せずに作業ができます。複数台のロボットが順番に棚を運んでくるため、これまで移動に使っていた時間を削減でき、作業効率が大幅に向上します。こういった倉庫内で活躍するロボットには、IoTをはじめとして5Gやエッジコンピューティングの技術が応用されています。

RFIDを用いた在庫管理

RFIDは、電波を使って物品を識別するための技術です。情報を記録できるRFIDタグを物品に取り付け、RFIDリーダーによって情報を判別することができます。RFIDリーダーは手で持つものだけでなく、コンベアやフォークリフトに取り付けることもでき、荷物の判別を自動化することが可能です。また、RFIDは複数の荷物の情報を一括して読み取って判別できるのも大きな特徴です。これにより、在庫管理や入出庫管理の正確性を向上しながら高速化できます。RFIDは物流分野で広く活用されており、物流のトレーサビリティによる品質保証にも貢献しています。

WMSで正確な倉庫管理

WMS(倉庫管理システム)は、商品の入庫や出庫、在庫数の確認、棚卸し作業の補助などができ、倉庫でのさまざまな業務を効率化するシステムです。近年の倉庫業務は、倉庫の多機能化や取り扱う商品の多様化、配送の迅速化などにより、膨大な量の情報処理を必要とします。従来の人による手作業や紙ベースでの管理では到底処理しきれない量であり、WMSは物流業務にもはや必須ともいえる存在となっています。
ただし、WMSを運用するには、WMSで管理するためのデータが必要です。データの取得にはIoTが活用され、その送受信には5Gが使われています。また、データの処理にエッジコンピューティングを組み合わせることで情報のリアルタイム性を向上し、管理最適化のためにAIが用いられているWMSもあります。
このように、複数の技術が結びつくことで、物流システムはより正確で迅速な処理が可能になり、現代の複雑な処理が求められる物流業務を支えているのです。

スマート物流の導入が課題解決のカギとなる?

物流業界は人手不足やコスト増加などのさまざまな課題を抱えていますが、ITの応用によってそれらの課題を解決するカギを見出そうという取り組みが進められています。ITを活用した物流、つまりスマート物流が、これからの物流の姿となっていくのではないでしょうか。物流に関しても、IoTやAI、エッジコンピューティングなど、新たなデジタル技術の活用が重要となっていくと考えられます。

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