ホーム エッジ コンピューティング 生産管理と工程管理、違いは何?

生産管理の分野には、さまざまな言葉が飛び交っています。それだけに、厳密な意味の違いがあいまいになってしまうこともあります。例えば、よく聞く「生産管理」と「工程管理」の違いがはっきりしない人も多いのではないでしょうか。また、最近では「製造管理」という言葉も聞かれるようになりました。この記事では、これらの言葉の違いや、ほかにも生産管理分野でよく聞かれる言葉について解説します。

生産管理・工程管理とは?

生産管理とは生産(設計・調達・作業)をQCD(品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery)の観点から管理することです。あるいは、生産活動が効率的・効果的になるようにQCDの観点から生産活動を調整することともいえます。

一方、工程管理とは生産管理のうち、特に製造工程の管理をいいます。つまり、生産管理の一部としてQCDの観点から製造工程を管理することです。

工程管理によく似た概念として「製造管理」という言葉があります。最近使われるようになった言葉ですが、概念的には「工程管理」とほぼ同じです。ただし、「工程管理」が古典的な文脈で使われるのに対し、「製造管理」は「製造管理システム」といった、現代的な文脈で使われる場合が多いようです。また、「工程管理」が人手による管理をイメージするのに対して、「製造管理」の場合にはIT機器を駆使した管理をイメージする場合が多いです。

なお、生産管理用語の基本的な定義はJIS Z8141(日本工業規格)に記載があります。興味のある方は参照してください。

⇒こちらの記事でもご紹介しています。
生産管理・製造管理・品質管理の違い | Stratus Blog
品質向上~製造業における品質とその向上とは | Stratus Blog

生産管理・工程管理の管理指標

生産管理・工程管理はいくつかの指標に基づいて行われます。もっとも重要なものに「生産性」があります。生産性の定義は、産出量(Output)を投入量(Input)で割った値です。具体的には産出量には生産量、生産金額、付加価値などが該当し、投入量には、労働量、投入資本、原材料が該当します。例えば、生産量を労働量で割った値は労働生産性です。

また、生産のテーマを取り上げたものにP(生産性)、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)、S(安全性)、M(意欲:モラル)、E(環境性)があります。つまり、生産システムは、生産性や効率だけでなく、これらの多様な要求を満たしていく必要があるのです。生産管理や工程管理は、これらの指標をできるだけ高いレベルでバランスよく実現するために必要不可欠な活動といえるでしょう。

管理対象

管理対象として挙げられるものに「生産の4M」があります。別の言い方をすると、生産活動に使用できる経営資源のことで、人間(Man)、機械(Machine)、原材料(Material)、加工方法(Method)の略です。「加工方法」の代わりにお金(Money)とした定義もあります。また情報(Information)を加えた4M1Iとする場合もあります。生産管理や工程管理というと物の管理だけをイメージするかもしれません。しかし、生産管理や工程管理は、生産活動に必要な資源をコントロールして適正配分することで生産全体の調整を行っています。特に生産活動に携わる「人」の管理は大変重要です。

その他の用語

3S

生産の合理化に関する基本原則のことです。単純化(Simplification)、標準化(Standardization)、専門化(Specialization)の頭文字を取って3Sと呼ばれます。

  • 「単純化」とは、製品や仕事の種類を減らして生産を簡略化することです。これにより、生産効率を上げることができます。
  • 「標準化」とは、単に種類を減らすだけでなく、種類や方法を統一して標準を決めることです。例としては、作業標準や設計標準などが挙げられます。標準化は、部品、機械、資材などの物の標準化と作業のような方法の標準化に分けられます。これにより、作業を簡単にし、原価を下げることが可能です。
  • 「専門化」とは、製造する機種や品種を限定し、仕事を分担して専業化することです。例えば、得意な技術に特化する、あるいは特定の製品群のみの製造販売に専念することを指します。これにより、専門企業としての優位性・独自性を発揮できます。

5S

職場での管理の前提となる原則のことで、主として現場の「人」の行動の指針となるものです。「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」の頭文字を取って5Sと呼ばれます。生産性の高い現場はこれらの5Sが高いレベルで実現できているといわれています。

  • 「整理」とは、必要なものと不必要なものを区別して、不必要なものを片付ける(捨てる)ことです。
  • 「整頓」とは、必要なものを必要なときにすぐに使用できるようにするために、決められた場所に準備しておくことです。これにより、必要なものが一目でわかるようになります。
  • 「清掃」とは、必要なものに付着した異物を取り除いてきれいにすることです。
  • 「清潔」とは、以上の作業が繰り返され、汚れのない状態が維持されていることです。
  • 「しつけ」とは、決められたことを必ず守ることです。

ECRSの原則

改善の4原則のことです。「排除(Eliminate)」、「結合(Combine)」、「交換(Rearrange)」、「簡素化(Simplify)」の頭文字を取ってECRSの原則と呼ばれます。

  • 「排除」とは「なくせないか」と考えることです。例えば、図面に曲面加工の指示があっても、曲面加工の意味がなければ排除することなどです。また、強度の許す範囲でボルトの個数を減らす、といったことも含まれます。
  • 「結合」とは、「一緒にできないか」と考えることです。例えば、工作機械を単能機から複合加工機にすることがこれにあたります。
  • 「交換」とは「順序の変更はできないか」と考えることです。例えば、組み立て工程を変えられないか検討することです。
  • 「簡素化」とは「単純化できないか」と考えることです。例えば、余計な部品をなくすことがこれにあたります。身近な例を挙げると、ミラーレス一眼カメラには昔の一眼レフカメラに必ずあったペンタプリズムやクイックリターンミラー、機械式シャッターがなく、電子シャッターや電子ファインダーに置き換わっています。

5W1H

改善活動を行うときに用いられるWhat(何を)、When(いつ)、Who(だれが)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)による問いかけのことです。

その他の用語

その他にも、以下のような用語を知っておくと便利でしょう。

  • 「付加価値」:自己の企業活動の結果、新たに付与された製品やサービスの価値のことです。
  • 「リードタイム」:発注してから納入されるまでの時間、もしくは素材が準備されてから完成品になるまでの時間のことです。特に「生産リードタイム」といった場合には、生産の着手時期から完了時期に至るまでの期間を意味します。よく現場では、「この部品の納期はアシが長い」ということがありますが、この「アシ」とはリードタイムのことです。
  • 「稼働率」:人または機械における就業時間、もしくは利用可能時間に対する有効稼働時間との比率のことです。
  • 「工数」:仕事量の全体を表す尺度で、仕事を一人の作業者で遂行するのに要する時間のことです。
  • 「負荷」:人または機械・設備に課せられる仕事量のことです。時間、重量、工数などの単位で表されます。
  • 「歩留り(ぶどまり)」・「収率」:投入された主原材料の量と実際に産出された品物の量との比のことです。機械製品や電子製品などでは「歩留り」、化学製品や医薬品などでは「収率」という場合が多いです。「歩留り」は生産過程で手直しを行った製品を考慮しています。そのため、生産ラインの性能を正確に判断するには次に述べる「直行率」が用いられます。
  • 「直行率」:出荷される製品のうち、生産過程で手直しをまったくしないで完成した製品の比率のことです。生産ラインの性能が正確に反映されます。

正しい用語は生産管理や工程管理の理解につながる

以上、生産管理や工程管理に使われる基本的な概念を説明しました。この分野では似たような言葉がたくさんあります。また、一般的にはあまりなじみのない言葉も多く、戸惑うこともあるでしょう。しかし、これらの言葉の概念をきちんと理解していないと、いずれ誤解の原因になるかもしれません。用語を正しく理解することは、生産管理や工程管理をよりよく実践していくことにつながるのです。

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