新年度が始まりました。今月初めには桜咲く中で、入学式や入社式が多く実施されました。昨年と比較すると、オンライン形式ではなく実際に会場に集合する形式の割合が増えたのではないでしょうか。日本ストラタステクノロジーは3月が新年度のスタートですので1か月早いのですが、3月の中旬には全社員がオンラインで新年度の狙いや方針を共有するイベントを実施しました。また、3月末には営業関係者が集って本年度のキックオフミーティングを実施しました。本年度は米国本社にて、多様性を尊重するための施策や、プロフェッショナルとしてのキャリアを構築するための教育に力を入れることを標榜していますので、日本ストラタステクノロジーにおいても注力したいと考えています。
さて、昨年度を振り返りますと多くの課題が次から次へと発生して、その対応に追われたことが思い出されます。コロナ禍は感染者数の第5波そして第6波を迎え、当社も例外ではなく社員やその家族にも感染者が発生しました。その中で、在宅勤務の促進を継続し、オフィースでの感染対策を徹底するとともに、職域接種を実施しながら第2回目、第3回目のワクチン接種を促進しました。サプライチェーン上の問題では、特に半導体不足は製品の原価と納期に大きな影響をもたらしました。部品によっては通常時の100倍の価格で各社が取り合うということも発生しています。その中で、昨年度は無事に新製品であるztC Edge 200i/250iをリリースして市場に出荷することができました。また、サプライチェーンの問題を何とか乗り越えて、ftServerの顧客納期を守ることができました。また、それらの成果として、業績上も計画に対して近接した結果を残すことができました。パートナーの皆様のご協力と社員の頑張りの賜物だと考えています。
年初の計画をたてて見通すことは、どの年も容易ではありませんが、本年は通常以上に難しく感じます。1つ目の要因は、昨年から継続しているコロナ禍やサプライチェーン上の課題の影響がいつまで続くのか読み切れないということです。但し、これらの課題に関しては、時間はかかりますが改善される方向になることは間違いないと思われます。実際に多くの国でウィズコロナでの経済活動が始まり、半導体の不足も断続的に続きますが秋以降はやや改善することが期待されます。2つ目の要因は日本のマクロ経済の不安定です。日本は金融政策を通じて円安傾向を生みだして、一定期間は輸出産業を中心にこの傾向を享受していました。しかし、直近では円安傾向が想定以上に進んでいます。そのため、原油や天然ガスの資源や、小麦などの食料や医薬品を輸入に依存している日本では、以前ほどの輸出産業の勢いがないことも相まって、経常収支が大きな赤字に転落しています。しかも、この傾向はしばらく継続しそうです。
今年の1月はこれまでで2番目の大きな経常赤字でしたが、現在進行中のロシアのウクライナ侵攻の影響は含まれていません。この影響による資源や食料価格の高騰の影響が貿易収支に出てくるのは、統計上はこれからになります。日米間の金利差も拡大しており、現時点では円安に歯止めがかかる具体的な要因が見つかりません。給与水準の上昇よりもモノやサービスの値段が激しく上がってしまう、悪いインフレになる兆候があります。要約しますと、昨年度の課題であったコロナ禍やサプライチェーンの問題は、時間の経過とともに改善方向に向かうことが期待されるが、マクロ経済的には経常収支の赤字が続き、やや悪いインフレの状況になりそうだということです。
このようなビジネス環境の中で、日本ストラタステクノロジーはエッジビジネスの成長分野として、自動車および自動車部品、半導体を含むハイテック、電車を含む交通、そして医薬・ライフサイエンスの分野をフォーカス領域として策定しました。他の地域のフォーカス領域を見ますと、米国では石油・ガス、医薬・ライフサイエンスが含まれています。アジアパシフィックでは鉱工業、石油・ガス、そして交通が含まれています。欧州では、再生可能エネルギー、交通、医薬・ライフサイエンスが含まれています。興味深いのは、重複は有りますが、4地域すべてでフォーカスするという領域はなく、各地域に特徴的な領域が必ずあることです。それぞれの地域で、採用事例をブループリントとして社内向けに作成することになりますので、4地域で共有することにより共通のフォーカスエリアには知見が深まりますし、ある地域の独自のフォーカスエリアに関しては他の地域が参考にして新規の領域としての検討が進むことになります。
もちろん、エッジビジネスの成長を下支える既存の伝統的ビジネスでも、決済系ソリューションを始めとする金融や、小売り・サービスの領域での安定的受注も見込んでいます。これらの領域は国内市場で一定の成長性も担保されていますし、システム更新需要も高く、期待をしているところです。
当社では、この春から新しい社員も加わり、フレッシュなスタートを切ることができました。経済的な動向や、ビジネスの見込みに関して楽観的になるという表現を、英語では、Bullishと言います。“強気の”と訳したほうが近いでしょうか。Bull 「雄牛」から由来している言葉のようです。本年度のスタート時にはマクロ経済的には少し霞のかかった状況のように感じますが、昨年からのコロナ禍やサプライチェーンの課題が改善される方向にあること、米国経済が活気を示しており、アジアパシフィックの経済も回復に向かっている兆候があることなどを背景に、日本でもBullishなビジネスを期待したいと思います。