製造業では、生産効率向上、製品の品質向上のための手段として、AIやIoTなどの先端IT技術の導入によりスマート化が進んでいます。しかし、データ量の増加に伴いリアルタイムでの分析が難しいうえ、ネットワーク経由のデータ量も増加し、業務に遅れが生じるといった新たな課題が生まれています。そこで、スマート化した工場で新たに生まれる課題解決策として期待を集めているのがエッジコンピューティングです。今回は、スマート工場の課題を解消し、生産効率向上、製品の品質向上を実現するエッジコンピューティングについてお伝えします。製造業でスマート工場の課題解決にお悩みの担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
エッジコンピューティングとは
エッジコンピューティングのエッジとは、端や周縁という意味で、エッジコンピューティングとはコンピュータネットワークの周縁でデータ処理を行う技術を指します。具体的にはスマートフォンやパソコンのほか、監視カメラやセンサーなどIoT端末もしくはサーバーでデータ処理や分析を行う分散型アーキテクチャの仕組みです。
エッジコンピューティングが製造業で注目を集める理由
エッジコンピューティングが製造業で注目を集める理由はいくつか考えられますが、なかでも大きい理由として挙げられるのが工場のスマート化です。業務効率化や人手不足解消の施策として工場にもAIやIoTの導入が進むのに伴い、データ量も爆発的に増加しています。
従来、大量のデータはクラウドコンピューティングの活用によって処理をしてきました。しかし、インターネット経由ですべてのデータを送信し、処理と分析をして戻す際にタイムラグが発生し、業務が滞ってしまうケースも少なくありません。このタイムラグを解消する手段として導入が進んでいるのがエッジコンピューティングです。
エッジコンピューティングでは、すべてのデータをクラウドに送るのではなく、周縁のデバイスで処理を行い、必要なデータだけをクラウドに送信します。これにより、クラウドやネットワークにかかる負荷を軽減し、遅延を抑えることで効率的な業務が実現するとして、注目を集めるようになったのです。また、すべてのデータをインターネット上でやりとりする必要がなくなり、セキュリティリスクが軽減する点。あるいは、ネットワーク障害の影響を受けなくなり可用性が高まる点もエッジコンピューティングが注目を集める要因となっています。
⇒エッジ コンピューティング について、詳しくはこちらをご覧ください:
エッジコンピューティングがなぜ注目されるのか―クラウド・オンプレミスとの違いとは|Stratus Blog
製造業の現場でエッジコンピューティングを活用するメリット
実際に製造業の現場でエッジコンピューティングの活用によって得られる主なメリットは次のとおりです。
リアルタイムのデータ処理が可能になる
データが発生する現場で遅延なく処理が行えるため、即時性を求める業務でも遅延なく行えるようになります。
分散処理によりネットワークやデータセンターにかかる負荷・コストが軽減する
エッジコンピューティングを導入することで、従来のようにデータセンターで集中してデータ処理を行う形から、分散してデータ処理を行う仕組みに転換できます。
不良品検知予測のように、リアルタイムで必要なデータはエッジコンピューティング、生産管理レポートや日報などリアルタイム性が求められないデータはクラウドコンピューティングに分けることでネットワークやデータセンターにかかる負荷が軽減されます。また、必要なデータだけをクラウドに送ることによって通信費やデータセンター利用にかかるコスト削減も可能です。
情報セキュリティの強化、BCP対策につながる
エッジコンピューティングの活用により、外部に出したくないデータは工場内での処理が可能です。すべてのデータをクラウドに送る必要がなくなるため、情報セキュリティの強化につながります。また、複数のIoT機器やエッジデバイスにデータを分散して保持できるようになり、BCP(事業継続計画)対策としても効果的でしょう。
ほかにも、ネットワーク障害の影響を受けにくくなるため、高い可用性を得られるようになるのも、エッジコンピューティング活用のメリットです。
製造業の現場でエッジコンピューティングの活用により生じるデメリット
製造業においてさまざまなメリットを持つエッジコンピューティングですが、少なからずデメリットも存在します。主なものとして挙げられるのは次のとおりです。
エッジ デバイスの管理・保守の手間が増える
パソコン、スマートフォン、タブレット、IoT機器などエッジデバイスが増えるため、その管理や保守に手間がかかるようになります。また、これらデバイスの導入にかかるコスト増大もデメリットのひとつです。
ほかにも、エッジコンピューティングでは工場内のあらゆるデータを収集し、処理を行います。その結果、デバイスによってデータが重複してしまうリスクも生まれます。データ管理が複雑にならないよう設計段階から検討する必要があります。
工場内のセキュリティ対策が必要になる
工場内にさまざまなデータを保持したデバイスが配置されるため、デバイス運用ルールの徹底と定期的なメンテナンスなどデータ漏えいや消失へのセキュリティ対応が必要となります。
製造業でエッジコンピューティング活用に必要なプラットフォームの要件
製造業の現場でエッジコンピューティングを活用する際、そのプラットフォームに必要な要件は次のとおりです。
工場内の環境でも安定して稼働するサーバーであること
製造する製品にもよりますが、多くの工場は埃が多い、温度湿度管理が難しいといった課題があります。一般的なサーバーは、埃や湿度に弱く、場合によっては正常に稼働しなくなるケースも少なくありません。そのため、埃や湿度などサーバー設置に適さない場合であっても安定して稼働するサーバーを選択することが重要です。
高度な分析にも対応できる性能を持ったサーバーであること
エッジコンピューティングを実現させるには、サーバーの性能も考慮する必要があります。AIや機械学習といった高度な分析にも対応できる性能を持ったサーバーでなければ、エッジコンピューティングを導入しても高い効果は見込めません。
セキュリティ機能が豊富で運用が容易なサーバーであること
工場の現場では、高度なセキュリティ対策の整備されたサーバールームを設置できないケースも少なくありません。現場には専任のIT担当者が不在で、製造部門の担当者にその運用負荷がかかっているケースも多くあります。エッジコンピューティングでは製造ラインなどから収集する機密データを取り扱うため、セキュリティ機能が充実し、運用に負荷のかからないシンプルなサーバーを選択することも重要です。
エッジコンピューティングの導入のポイントはサーバーの選択
エッジコンピューティングとは、コンピュータネットワークの周縁でデータ処理を行う技術です。スマートフォンやパソコンのほか、IoT端末もしくはサーバーでデータ処理や分析を行う分散型アーキテクチャの仕組みで、クラウドコンピューティングによる集中型の負担軽減を実現します。
製造業においては、業務効率化や人材不足の解決策として工場のスマート化が進むなか、大量のデータ処理をリアルタイムに処理できることで大きな注目を集めています。
だし、工場内でデータを処理するためには、さまざまなデバイスの管理やそれをまとめるサーバーの選択が成果を高めるための重要なポイントとなります。
工場内の環境であっても安定して稼働すること、AIの分析にも対応できる性能を持っていること、セキュリティ機能が充実していることが欠かせません。エッジコンピューティング導入の際は、サーバーの選択を慎重に行い、大きな成果を上げられるようにしましょう。