ホーム エッジ コンピューティング 製造業のDXで何が変わる?事例を交えて必要性や取り組むポイントを紹介

DXの推進により製造業の課題を解決できるという期待が高まっています。しかし、「DXで具体的に何が変わるのかわからない」「DXに取り組んでいるが、なかなか進まない。DXを進めるために何が必要?」と感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、製造業のDXについて、DXが事業にもたらす変化やDXに取り組む際のポイントを解説します。製造現場のDXを推進したいと考えている場合は、ぜひ参考にしてください。

製造業のあり方を変えるDXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、データやデジタル技術を活用して人々の生活をより良い方向へと変化させることを意味します。
製造業において期待されているDXとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタル技術を活用して実現するビジネスの変革を指します。
実際に、建設機械を製造・販売する企業で、機械に取り付けたセンサーのデータを遠隔で監視し、AIの予測技術で故障を予知するシステムを提供している事例があります。故障を予知することで、現場での予期せぬ停止の防止や、停止時間の短縮が可能です。建設機械の故障で工期が遅れる心配がなくなり、顧客の信頼度向上を実現しています。
このように、製造業で積極的にDXを推進している企業は、モノの販売から顧客の満足度を高めるサービスへとビジネスモデルが変化してきているのです。

製造業のDXが注目される4つの背景

なぜDXが注目されているのでしょうか。特に、製造業におけるDX推進の背景について、4つの視点から解説します。

  1. SDGs実現への期待
    DXは主にビジネスの変革に着目した取り組みですが、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)との共通点があります。それは、どちらもより良い社会の実現を目指していることです。
    DX推進の取り組みがSDGsの実現に寄与している事例を紹介します。製造業向けに開発された統合計画管理システムを導入した食品製造会社では、AIによる需要予測や部署を横断した需要と供給のコントロールが可能になりました。これにより、生産計画を立案する業務の効率化や属人化の解消だけでなく、食品ロスの削減を実現しており、SDGs達成に寄与しています。
    このように、デジタル技術を活用した業務変革への取り組みがSDGs達成にもつながることが期待されています。
  2. カーボンニュートラル達成の手段
    DX推進はカーボンニュートラル達成の手段としても注目されています。
    カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。日本は、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。
    参考:環境省「カーボンニュートラルとは
    カーボンニュートラルの実現に向けて製造業で積極的に進められている取り組みのひとつが、サプライチェーン全体の二酸化炭素排出量を可視化するカーボンフットプリント(CFP)です。経済産業省の外局、資源エネルギー庁でも、CFPを算定する基盤整備について議論が交わされており、DX推進の遅れがCFP実現に向けた課題のひとつとして指摘されています。言い換えると、 DX推進は、カーボンニュートラルの実現には欠かせない取り組みとして認識されているのです。
  3. 熟練者の技能に依存した事業構造からの脱却
    日本の製造業が世界的に高い競争力を維持してきた要因のひとつに、熟練の技術を持つ人材の存在が挙げられます。しかし、特に労働人口の減少を背景に、こうした熟練技術を継承できないことが近年大きな課題になっています。日本企業が競争力を保つには、人の技能に頼る生産体制から抜け出すことが必要です。そのため、デジタル技術を活用して、自社の暗黙知を形式知化することへの関心が高まっています。
    熟練者の技能をデータで可視化できるようになれば、機械での自動化や品質ばらつきの安定化も可能です。自動化は人手不足の解消にもつながり、製造業の競争力低下を防いでいけるでしょう。
  4. 不確実性の高まる環境への対応
    国際的な地政学リスクの高まりや、新型コロナウイルス感染症の流行など、事業環境の変化が激しさを増しています。また、製品ニーズが移り変わるスピードが加速していることにより、製品開発までのリードタイム短縮や生産プロセスの高度化が求められています。
    このような厳しい環境で企業が生き残るには、柔軟に対応できる組織が必要です。DXは、正解のない世界でより良い答えを追求していくための取り組みでもあるので、不確実性の高まる環境に対応できる組織の実現に適しています。
    このようにDXは、すべての企業にかかわる取り組みとして認識されはじめています。

製造業DXが事業にもたらす変化

製造業のDXを推進することで、具体的にはどのような変化が期待できるのでしょうか。詳しく見ていきます。

  1. エンジニアリングチェーンの強化
    エンジニアリングチェーンとは、設計部門を中心とした業務で研究開発から設計や生産までの一連の流れを示す名称です。製造業におけるDX推進からエンジニアリングチェーンが強化されることで、製品競争力の向上が期待されています。経済産業省が公表する資料「2020年版ものづくり白書」にも示されていますが、製品の品質とコストの8割は設計段階で決まるといわれています。したがって、開発の初期段階にリソースを集中させて製品をつくり込むことが重要です。
    設計部門のDXを推進することで、問題点の早期発見や品質向上、後工程での手戻りによる無駄を少なくするだけでなく、設計業務の質やナレッジを共有できるシステムを導入してエンジニアリングチェーンを強化していけます。
    参考:製造基盤白書(ものづくり白書)「製造業の企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
  2. サプライチェーンの柔軟性の向上
    DXによりサプライチェーンの柔軟性が高まることが期待されています。サプライチェーンとは、調達から製造、販売・保守までの工程の流れを指します。サプライチェーンのデジタル化により、各工程におけるシステム間の連携とデータの一元管理が可能になります。蓄積されたデータにAIを組み合わせることで、以下の業務を顧客のニーズに合わせて迅速に変えていくことができます。
    ・原材料の調達
    ・生産計画の構築
    ・販売計画の策定
    ・在庫計画の策定
    これにより、市場の変化によって生じる、顧客の急な注文変更や頻繁な仕様変更にも対応可能なサプライチェーンを実現できるでしょう。

製造業DXの推進に必要な4つのポイント

DX推進に必要な4つのポイントを、それぞれ順番に見ていきましょう。

  1. DXを目的化しない
    DXを推進する目的はより良い社会や組織の実現であり、デジタル技術の活用はその手段です。したがって、DXへの取り組みを通してどのような社会を実現していくのか、どのような組織を目指していくのかを明確にする必要があります。経営陣が自社の強みを再定義し、DXのビジョンや取り組みを明確に示すことが重要です。特に、新しい技術を導入する際には、導入すること自体が目的にすり替わってしまいやすいため、注意しましょう。
  2. DXに必要な人材を育成する
    「2022年版ものづくり白書」によると、DXを推進するためのIT人材の確保に難しさを感じている企業は約88%にのぼります。IT人材は日本全体で不足しており、すべての企業が高度なIT人材を確保していくことは難しいでしょう。そこで、社員のリスキリング(学び直し)に関心が高まっています。近年では、専門知識がなくてもアプリケーションを開発できるソフトウェアが開発されています。高度な技術ではなく、リスキリングによってデジタル技術を現場に落とし込む考え方を身につけられれば、IT系以外の人材でもDXを推進することが可能になります。
  3. 工程全体を最適化する
    製造業では、設計機能と生産機能がそれぞれ独立して最適化に取り組んでいるケースが多く見られます。同じような取り組み方でDXの推進を展開してしまうと、製造現場のデータを製品設計に活用できなくなります。製造業におけるDXの目指す姿は、すべての工程がシームレスにつながり、設計段階で精度の高いシミュレーションを行えるようにすることです。そのため、部門ごとに課題を解決する部分最適化ではなく、工程全体の問題を解決する打ち手を検討していく必要があります。
  4. デジタル化を推進する
    総務省サイトで公開されている「我が国のICTの現状に関する調査研究報告書」によると、他国と比較して日本企業はデジタル技術の導入が遅れていることが指摘されています。DX推進の基盤はデジタルデータの収集と分析です。製造業では、実世界の工場からあらゆるデータを収集し、仮想空間に同じものを再現するデジタルツインの実現が、ビジネスモデルに大きな変革をもたらすと考えられています。そのためには、紙の帳票のデジタルデータ化や設備の稼働データの取得など、小さな取り組みの積み重ねが必要です。また、工場内のあらゆるデータを収集、分析するためのIoTプラットフォームの重要性も高まっています。

製造業DXでビジネスが変わる!実現に向けて一歩を踏み出そう

製造業を取り巻く環境の変化や、SDGsやカーボンニュートラルへの注目の高まりから、DXによる変革の重要性が増しています。
正しい方向性で効率良くDXを進めていくため、紹介したポイントを押さえてDX推進に取り組み、着実に目標を達成してゆくことが求められます。
上述したように、DX推進のキーとなるのは、デジタルデータの収集と分析です。工場内で収集するデータは膨大な量となり、すべてをクラウドサーバに送信して分析にかけるとネットワークに大きな負荷がかかります。この負荷を分散するために注目されているのが、エッジコンピューティングです。
製造業のDX推進に欠かせないエッジコンピューティングとそのための条件については、エッジコンピューティング研究会ブログ「エッジコンピューティングとクラウドコンピューティング それぞれの違いと、使い分け」を参照してください。

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