ホーム デジタルトランスフォーメーション DXの実現に欠かせないデータ活用。その理由やメリット、活用のポイントを解説

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「DX白書2023」によると、日本企業がDXを推進するうえでデータの利活用をしている企業は全体の55%です。一方で、データの利活用に取り組む予定がない企業も20.5%とけっして少ない数字ではありません。既存業務プロセスの見直し、勘や経験だけに頼らない戦略策定などの、DXの実現に向けた取り組みに欠かせないデータ活用を、これまで以上に進めるには何が必要なのでしょうか。今回は、DXの実現に欠かせないデータ活用について、その重要性や活用のメリット、ポイントをお伝えします。

DXの実現にデータ活用が重要な理由

DXを実現させるうえで、データ活用はなぜ重要なのでしょう。ここでは、主な理由について解説します。

客観的な経営判断が可能になる

データを分析した結果をもとに意思決定を行うことで、定性的な情報だけに頼らない適切な現状把握と、迅速かつ客観的な経営判断が可能になります。

新たな商品の開発や事業創出をしやすくなる

従来の勘や経験に頼った経営戦略も重要ですが、それだけで新たな市場の動向や顧客ニーズをつかむのは簡単ではありません。しかし、社内データに加え、IoTや社外のリアルタイムかつ多様なデータを活用することによって、新たな商品の開発や事業創出をしやすくなります。

顧客体験の向上が期待できる

顧客の購買データに加え、行動データやパーソナルデータなどの多様なデータを活用すれば、オムニチャネルやOMO(Online Merges with Offline)、O2O(Online to Offline)といった新たなビジネスモデルの創出が期待できます。その結果、顧客の利便性が高まり、顧客体験の向上が期待できるでしょう。

DXの実現にデータを活用することのメリット

DXを実現させるためにデータを活用することで得られる主なメリットは次のとおりです。

業務効率化・生産性の向上につながる

既存業務プロセスの見直しや勘、経験といった属人化の回避により、業務の標準化が可能です。業務の標準化はコスト削減や業務効率化・生産性の向上につながり、少ない人材で高い成果を上げられる可能性が高まります。また、新製品開発や新規事業の創出に向けた業務に集中できる時間的余裕も生まれるでしょう。

競合との差別化にもつながる

AIやIoTの進化により、リアルタイムのデータ収集・分析が可能になりました。これにより、競合に先駆けた意思決定が実現します。競合との差別化を図り、ほかにはないサービスの提供や商品の開発も可能になるでしょう。

DXにおけるデータ活用のポイント

DXにおけるデータ活用では、注意するべきいくつかのポイントがあります。具体的には次のとおりです。

適切なデータを選択する

現在、社内データだけではなく、カメラやセンサーなどを使ったIoT、統計やSNSなどの社外データなど、活用できるデータの種類は拡大しています。しかし、すべてのデータを活用するのではなく、自社の目的や用途に応じて、適切なデータを選択することが重要です。

部門間で連携する

各部署やチームで得たデータを別々に管理、活用することは非効率で、成果を上げるのも困難です。データ統合ツールを活用し、各部署で得られたデータを組み合わせることで、データの重複をなくし、新たな知見を得ることが可能になります。

効果検証を徹底する

「データを収集して活用した」だけで終わってしまうと、成果が上がったかどうかがわかりません。データ活用による施策は必ず効果検証を行い、うまくいかない場合は改善を行い、うまくいった場合は再現性を高めるようにすれば、さらに高い成果を得られます。

データの扱い方を教育する

DXにおいてデータの活用はさまざまなメリットをもたらしますが、適切な管理をしなければ、情報漏えいやサイバー攻撃を回避できず、大きな損害を被るリスクも存在します。そのため、データを扱う担当者はもちろん、全社員のセキュリティ意識を高め、適切にデータを扱うための教育の徹底が必須です。

DXにおける主なデータ活用事例

データを活用してDXの実現につなげた企業の事例を紹介します。

  • 有限会社ゑびや
    三重県伊勢市で飲食業を営む有限会社ゑびやは、創業110年を超える老舗です。
    2012年の時点で、同社の客単価は800円で、提供するメニューもカレーやうどんなど一般的なものがほとんどでした。利益向上を目指して、まずはエクセルで天気、気温、各メニューの売上、近隣の宿泊者予約数などを記録し、それまでの勘と経験だけに頼った商売を、データに基づく運営に置き換え始めました。
    その後、自社開発したAIによる来客予測や、画像解析によるデータ収集、BIツールによる分析などを行い、バックオフィス業務の多くは外注やクラウド活用に変更しました。そこで空いた時間を、社長自ら付加価値の向上や新規ビジネスモデルの構築に使い、伊勢食材を使ったブランディングや、提供メニューの高付加価値化による客単価向上施策を実行したのです。その結果、7年後に客単価3.5倍、売上高5倍、利益50倍、食材の廃棄ロス70%超削減を実現しています。
  • 株式会社ヒバラコーポレーション
    茨城県東海村に本社を置き、工業塗装を提供している株式会社ヒバラコーポレーションの事例です。1990年ごろの同社の粗利益率は低く、設備投資も難しいといった状況でした。1992年に前社長の他界を受けて26歳で社長に就任した小田倉氏は、当時まだほとんど導入が進んでいなかったスキャナーやプリンターを活用し、間接業務の電子化をきっかけにIT化を進めていったのです。
    同社では、「技術のデータ化」「生産管理」の面でITを活用し、それまでは困難であった技術の継承や塗装にかかわる全作業のデータ化を実現しました。近年はそのノウハウをメーカーの塗装部門に提供するコンサルティング事業の推進もしており、「日本初のコンサルティング型工業塗装」という新たな業態を確立しました。
  • 松本工業株式会社
    福岡県北九州市でシートフレームやヘッドレスト、アームレスト、ドア・排気系部品などの自動車部品や金属製品の製造を行っている松本工業株式会社の事例です。同社では、製造設備の稼働状況や現場業務の可視化を目的とし、データの活用を実践しています。
    具体的には、RFIDを用いた生産管理システムの開発により、生産工程における稼働状況、各工程に要する時間や作業者といった多様な情報の取得を実現しました。その結果、製造不良の発生条件、作業のネックとなっている部分やその原因を究明して改善策を講じることで、製品不良率の減少や在庫の適正化に効果を上げています。

DX実現のためのデータ活用のポイントはデータの選択と効果検証の徹底

DXを実現させるには、既存業務プロセスの見直しによる効率化、生産性向上が欠かせません。それを可能にするのがデータ活用です。これまでの勘や経験だけに頼った戦略策定では、既存業務の変革や新たなビジネスの創出は難しいでしょう。市場のトレンド、消費者のニーズをリアルタイムで収集・分析し、迅速な意思決定を行うことが重要です。
従来、企業のデータ活用といえば、自社内のシステムにある顧客データや販売データ、Webログなどがほとんどでした。しかし、現在ではカメラやセンサーを使ったIoT、統計やSNSなどの社外データなど、活用できるデータの種類は拡大しています。このなかから、目的に適したデータを選択し、適切に活用しなければなりません。
また、データは利用するだけではなく、効果検証も必須です。データ活用による戦略を実施し、どのような成果を得られたか、足りなかったものは何かを検証しないと、何度も同じミスを繰り返してしまうでしょう。
活用できるデータの種類が拡大しているからこそ、何を使うか、使った結果がどうであったかをしっかりと検証することがDXの実現につながるのです。

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