ホーム エッジ コンピューティング センシングとIoTの進化がもたらす産業の変化―AI・エッジと共に次の段階へ

センシングとIoTの進化がもたらす産業の変化―AI・エッジと共に次の段階へ

センシング技術とIoTは、それぞれがお互いを必要とする密接な関係にあります。センシング技術の進化はIoTをどのように変え、また、IoTが進化することでセンシング技術に求められるものはどう変化したのでしょうか。センシングとIoTの関係、AIやエッジなどとの結びつきによって起こる産業の変化についてご紹介します。

センシング技術とIoTの密接な関係

センシング技術はIoTと結びつくことでお互いに影響し合い、進化してきた関係にあると言えます。どのような結びつきが進化につながったのでしょうか。

センシング技術の進化が生み出したもの

センシング技術とは、センサーによってさまざまな情報を計測し、数値化して伝達することで情報を応用する技術のことです。
センシング技術はセンサーの活用と同時に生まれた技術と言えますが、ある変化がきっかけで注目度と重要性が高まりました。その変化とは、社会全体へのIoTの普及です。
IoTはさまざまなモノから得る情報をインターネットによって送信します。このとき、情報を得るための手段として活躍するのがセンシング技術です。IoTの全体像を人間に例えると、情報を運び処理するのが神経や脳だとすると、目や耳、鼻や舌、皮膚などの五感に関する部分がセンシング技術だと言えます。
このように、センシング技術はIoTにとってなくてはならない存在です。

⇒センシング技術とIoTの関わりについては、こちらの記事でもご紹介していますのでご覧ください。
センサーの高度化と多様化-センシングの進化が生み出すもの | Stratus Blog

IoTの進化が情報の多様性を求める

IoTという考え方が登場した当初、センサーで計測できる情報の種類は少なく、人の感覚が勝っていたため実用的とは言えない状態でした。しかし、要素技術が進化することで、IoTは実用的なものとして爆発的に普及したのです。その核になる要素技術こそが、センシング技術です。

センサーの進化により、計測できる情報の種類が増えただけでなく精度も向上し、センサーから得られる情報の価値が高まったと言えます。これにより、IoTは実際にさまざまな分野で活用されるようになっていきました。

一方で、IoTが活用される分野が増え高次元で応用されるようになると、そこで運用される情報にもさらに高い精度と多様性が求められるようになりました。これにより、センシング技術もさらなる進化が求められるようになっているのです。

このように、センシング技術とIoTはお互いに高度化することでさまざまなイノベーションを生み出し、これからの社会を大きく変える可能性を持っています。

センシングとIoTが変える産業

センシングとIoTがお互いに高度化して進化していくことで、産業にも大きな変化がもたらされています。その代表例として3つの業界の事例をご紹介します。

製造業では現実と仮想を組み合わせた工場へ

製造業とIoTの結びつきとして大きな注目を集めたのは、ドイツ政府の掲げた「インダストリー4.0」という産業プロジェクトです。これには第4次産業革命という意味も込められており、IoTをフル活用したものづくりを目指すというものです。

そのなかでも特に話題となったのは、「スマートファクトリー」という新たな工場のあり方です。この「スマート化された工場」とは、あらゆる機器がインターネットと接続され、工場そのものがIoT化していることを表します。情報の集め方、運び方、使い方を変えることで、業務プロセス改善、品質や生産性を継続的に向上させていく新しい工場と定義されています。

また、そうして物理空間で得た情報をデジタル空間で処理し、再び物理空間にフィードバックすることで効率化を図るという考え方も生まれました。これはサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ばれ、サイバー(デジタル)とフィジカル(物理)の新たな関係性を生み出すものです。

その発展形としてデジタルツインという技術も登場しました。工場全体がIoT化しているスマートファクトリーから得た情報により、デジタル空間にバーチャル(仮想)の工場を再現します。このデジタル空間上の双子、すなわちデジタルツインを稼働させ、そこで発生し得る課題を予知したり物理空間では難しいテストを行ったりすることができます。
こうした技術の前提として必要なのが工場全体のIoT化であり、あらゆる機器や場所にセンサーが必要となります。新しい工場のあり方をセンシング技術が支えているのです。

物流業界ではスマートロジスティクスへ

物流業務は、倉庫業務と輸送業務に大きく分けられますが、そのどちらにもセンシング技術とIoTの応用が進んでいます。

自動倉庫と呼ばれる、自動で積荷・荷降ろしを行う倉庫は以前からありました。その進化系とも言えるものが、IoTとロボティクスを駆使したロボット倉庫です。

従来の倉庫では、作業者がカートと共に移動しピッキング作業を行うというのが一般的な光景でした。しかし、すでに導入され稼働しているロボット倉庫では、これまでの常識を覆す形でピッキング作業が行われます。そこでは、ロボットが棚を持ち上げ、作業者がいる場所まで棚ごと商品を運んできます。作業者は倉庫内を動き回ることなく、順番に運ばれてくる棚から指定の商品を受け取る仕組みです。

このロボットが動くためには、ロボット自身だけでなく倉庫内の床や壁、ラックにもセンサーが必要です。ロボット倉庫はセンシング技術あってこそ実現していると言えるでしょう。

一方、物流業界の輸送業務で注目度が高いのは自動運転技術です。国内の物流の半分以上を支えているのはトラック輸送ですが、近年では運送業の人手不足が深刻化しています。そこで、物流業界では自動運転技術による人手不足の解消と効率化に高い期待を寄せています。

自動運転技術には、高度なセンシング技術とIoTといった情報を集めるプロセスだけでなく、処理の方法やフィードバックの速さも重要となります。センシング技術により正確な情報を収集し、エッジコンピューティングを組み合わせて情報のリアルタイム性を確保することで、安全な自動運転が実現すると考えられています。

医療分野ではAIによる医師の支援に期待

医療分野においても、センシング技術はすでに不可欠なものとなっています。心拍センサーや呼吸センサーなどのさまざまなセンサー類は、患者の状態を把握するために使われ運用されています。こういったセンシング技術とAIを組み合わせることで、がんを検出したり病変を発見したりするAI診断の研究も進んでいます。
ウェアラブルデバイスによる身体状態のモニタリング、病院に行かなくても診察を受けられるオンライン診断も、センシング技術とIoTを応用した新しい医療の形と言えるでしょう。

このように、医療分野でもセンシング技術とIoTの応用が進み、医師のなり手不足や医療従事者の業務負担軽減への貢献が期待されています。

IoTによって世界はどうなる

このようにIoTとセンシング技術が進化することで、さまざまな産業はその形を変えつつあります。

たとえば、物流において期待されている自動運転技術や医療におけるAI診断などは、「人がしなければならない業務」とこれまで考えられていたものです。しかし、センシング技術とIoTはそのあり方を大きく変える可能性を持っています。

これまでこういった業務が人手でなくてはできなかった理由として、得られた情報の処理速度に課題があったことが挙げられます。しかし、この課題に対し大きく前進する技術も登場しています。それがエッジコンピューティングです。

センシング技術とIoT、AIがどのように活躍するかの鍵を握っている技術がエッジコンピューティングと言えるかもしれません。

⇒さらに詳しくは
ビッグデータとAIの活用事例―その結びつきをさらに進化させる技術とは| Stratus Blog

センシングとIoTはAIと結びつき、エッジコンピューティングによって次の段階へ

センシング技術とIoT、AIの結びつき方についてご紹介しました。

センシング技術とIoTはお互いがお互いを必要とする結びつきの深い技術です。この2つが影響し合うことで、それぞれも大きく進化してきました。そして、これらによって得られたデータをビッグデータとして活用するAIによって処理されることで、IoTの使い方も変化しつつあります。また、これにエッジコンピューティングによるリアルタイム性が加えられることで、これまで「人でなければできない」と考えられていたことが、AIによってできるようになる可能性を与えられました。これらの技術が結びつくことで、産業は次の段階へと進みつつあるのです。

関連記事