ホーム エッジ コンピューティング MECとエッジコンピューティングの違いとは?5G通信の通能力を最大限に引き出すネットワーク技術

MECとエッジコンピューティングの違いとは?5G通信の通能力を最大限に引き出すネットワーク技術

MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)は、5Gの性能を有効に活用するためのネットワーク技術として注目されています。しかし、従来のエッジコンピューティングとの違いや、なぜ注目されているのかがわからない人も多いでしょう。そこで本記事では、MECと従来のエッジコンピューティングの違いや、注目されている背景を解説します。MECの利用場面や具体事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

MECとは

MECとはマルチアクセスエッジコンピューティングの略称で、ETSI(欧州電気通信標準化機構)が開発した規格のひとつです。エッジコンピューティングをモバイル通信用に進化させた技術で、5Gの性能を生かすためのネットワーク技術として注目されています。

エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングとは、端末の近くにサーバーを分散配置してデータを処理する技術のことです。データの発生源に近い場所で処理を実行させることで、「高速」、「低遅延」で解析が可能です。

自動運転や工場のロボットなど、高いリアルタイム性が求められるアプリケーションに使われています。

エッジ コンピューティング についてのより詳しい説明は、「なぜエッジ コンピューティングが注目されているのか?クラウドとオンプレミスの違いとは? |Stratus Blog」をご覧ください。

MECとエッジコンピューティングの違い

MECは、5G端末やIoT機器などのモバイル機器からの通信を中心とした、ローカル環境におけるエッジ コンピューティング の技術です。MECは、モバイル通信を意識して開発されました。

一方で、従来のエッジコンピューティングは、エッジ端末自体または端末の近くに置かれたコンピュータでデータを処理・分析を行うネットワークコンピューティング技術です。MECはエッジコンピューティング技術のなかでも、モバイル通信に考慮した規格である点が異なります。

MECが注目される背景

5Gは超高速通信(eMBB)・超低遅延通信(URLLC)・多数同時接続(mMTC)を実現する無線通信規格ですが、無線アクセスネットワークを導入しただけでは、その十分な性能を発揮できません。5Gの性能を引き出せるように、ネットワーク全体のアーキテクチャを見直す必要があります。

そのための技術としてMECが開発されました。MECを導入すれば、ネットワークの負荷軽減・低遅延・高セキュリティが実現します。

たとえば、VR(仮想現実)やMR(複合現実)を顧客サービスに導入すれば実際にその空間にいるような顧客体験を提供でき、今までにないサービスが実現可能です。このように、5G通信の能力を最大限に引き出すための技術としてMECが注目されています。

MECとエッジコンピューティングの活用場面

アプリケーションを分散処理して端末とサーバー間のデータ送受信にかかる時間を短くする場合には、従来のエッジコンピューティングが適しています。

端末から送信されたデータを一次処理することで、クラウドサーバーに送信するデータ量を小さくできるからです。エッジコンピューティングを利用することで、エンドツーエンドの低遅延が実現します。

これに対して、モバイル通信でのネットワークの低遅延性やセキュリティを向上させる場合は、MECが適しています。データの転送経路となるUPF(ユーザプレーンの操作を容易にするネットワーク機能)に設置するからであり、MECを導入すればローカルネットワークでデータを処理することも可能になるからです。

たとえば、5GにMECを組み合わせることで、以下のような用途に利用できます。

  • 自動運転
  • 自律型ロボット
  • 映像解析
  • VR(拡張現実)・MR(複合現実)

MECを設置する数を増やせば増やすほど、データの送受信が効率的になります。その一方で、コストを含めたビジネスモデルの制約などを考慮すると、MECの数や設置場所を慎重に決める必要がある点に注意が必要です。

MECの活用事例

5Gの性能を引き出す技術として注目されているMECですが、製造業では具体的にどのように活用されているのでしょうか。実際の事例を紹介します。

倉庫内物流の自動搬送システムへの活用事例

ひとつめは、大規模な倉庫内の自動搬送システムにMECを活用した事例です。

この企業では、倉庫にはすでに自律移動ロボットが導入されていましたが、自律運転をするためにはロボット1台に1つの制御部を積載する必要があり、導入や維持にかかるコストが高いという課題がありました。。

そこで、倉庫内にローカル5GネットワークとMECを導入し、制御部を集約することで、倉庫内を移動するロボットを距離センサーとモーターだけの運搬ロボットへとコストダウンすることに成功しました。

また、低遅延通信を実現する5Gを活用することで、運搬ロボット1台1台をリアルタイムに制御できるようになり、ロボット同士の協調搬送が実現しました。

これにより、1種類のロボットで大きさの違う荷物の運搬が可能になり、低コストで柔軟な搬送システムの開発に成功しています。

生産ラインの遠隔作業支援への活用ユースケース

遠隔作業支援にスマートグラスと5G・MECを活用し、複数の作業員に効率良く指導するシステムを実現したユースケースです。

この工場の生産ラインでは、作業員がスマートグラスを装着して撮影した映像をリアルタイムにMECへ送信し、即座にAIで処理させています。これにより、作業員の目の前で起きていることへの注意喚起や指導員への支援が実現します。作業員への支援を少人数で実行できるだけでなく、迅速なトラブル対応も可能です。

また、MECにAIを搭載しているため、映像解析はローカルネットワーク内で完結します。生産ラインを撮影した動画をクラウドへ送る必要がなくなり、セキュリティ面でのリスク低減にもつながります。

ARによる組み立て作業支援の実証実験

ARを使った組み立て作業指示に5GとMECを活用した実証実験を紹介します。

この企業では、部品を組み付けている手元をカメラで撮影し、大容量の映像を5G通信でMECに転送することで、AIでリアルタイムに組み立て状況を分析し、ARで指示するシステムの開発に成功しました。

ARに使われているのは、プロジェクターを用いたプロジェクションマッピングです。

部品の組み付けが間違っていれば、手元にエラーが表示されるため、作業員は間違いに気づけます。

解析結果で問題ないと判断されれば、プロジェクションマッピングで次の行動が表示され、作業員はスムーズに部品を組み立てていけます。

このシステムは、5Gの無線通信で映像をMECに転送するため、手元を撮影するカメラとプロジェクターはネットワーク内であればどこへでも移動できます。これにより、柔軟性のある生産ラインの構築が可能です。

MECとエッジコンピューティングは用途に合わせて選択しよう

エッジコンピューティングは、センサーやデバイスなどのデータ発生源に近い場所でデータを収集し、処理することでクラウドサーバーの通信量を低減するネットワーク技術です。

エッジコンピューティングをモバイル用に発展させたものがMECです。 MECは、モバイルネットワークの超低遅延、高いセキュリティ性を実現するために欠かせない技術です。

MECが進化すれば、どこにいてもデータが発生した場所ですぐに計算処理できるような、超高速・超低遅延のネットワークが実現します。しかし、実現にはコストがかかるといった課題があるのも事実です。そのため、5GにMECを使う際には、目的に応じてエッジサーバーを設置する場所を決める必要があります。

ぜひ本記事を参考に、MECについての理解を深め、活用方法を検討してみてください。

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